国会でのヒアリングに臨む元ジャニースJr.のカウアン・オカモトさん(右)と橋田康さん(5月16日)/(C)日刊ゲンダイ
次々と新たな告発者が現れ、問題の根深さが浮き彫りになっているジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(2019年死去)による性加害問題。
ジュリー社長を知る元Jr.が実名で告白「会見要請にも馬耳東風。改革や出直しも絵に描いた餅でしょう」
■テレビ出演は継続
31日にはTBSの佐々木卓社長が定例会見で、事務所が再発防止策などを発表したことに触れ、「それが今後ちゃんと進んでいくのかどうかが大事」と推移を注視していくと言明。NHKと他の民放各局のコメントも同じく、おおむね〈性加害は許されるものではないが、事務所の対応を注視していきたい〉といった趣旨のものに終始し、25日の会見で、テレビ東京の石川一郎社長が「タレントに罪や問題などがあるわけではない」と語った通り、ジャニーズのタレントの自局へのテレビ出演は変わらず続くといった内容だ。
これに対し“ジャニオタ”といわれる、ある熱狂的なジャニーズファンは、顔を曇らせながら、こう話す。
「変わらずテレビに出られることでホッとしているが、ファンにとっては昔から知っていたこと。告発するなら、今さら言うのではなく、ジャニーさんが生きてる時に言えよ、と」
元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏(27)が「ガーシーチャンネル」で告発し、BBCのドキュメンタリー番組を端緒に問題が“表面化”したことに違和感を持つジャニオタは多いのではないか、とこのファンは言う。
確かに、ファンは今回の騒動に対して、複雑な思いを抱えているようだ。「ジャニーズは努力が9割」(新潮社)などの著書もあり“ジャニオタ男子”としても知られる作家・編集者の霜田明寛氏は、「なぜジャニオタ(僕)はジャニー喜多川・性加害報道に沈黙したのか」という文章を5月24日に自身の「note」にアップしている。
そこでは「性加害は許されるべきものではない」というジャーナリストとしての気持ちと、ジャニー喜多川氏の「少年への愛」があったからこそのジャニーズだったというジャニオタとしての認識の間で葛藤を抱える心情を正直に吐露し、こうつづられている。
■あえて不感症に
〈ジャニーズを深く愛していればいるほど、一連の問題については深く考えたうえで、しかしそれは事実であれば自分たちの心の痛みになるから、あえて不感症になってきた──というところが、ジャニオタたちの実感ではないだろうか〉
〈これまで、「男がジャニーズ好きなの?」と訝しがって見られてきた十数年がある。やっとその偏見が薄まってきたタイミングでこの報道だ。世間のジャニーズへの目の厳しさは、ジャニオタであることを公言しづらくしていくかもしれない。それでも「僕はジャニーズが好きだ」と言っていきたい。言えるような会社であって欲しい、とも思っている。決してジャニオタを代表しようなどと思っているわけではないが、少しでも近い思いを抱えて悩んでいるジャニオタの人々と共有できればと思い、この文章を書いた〉
noteに書いた内容について、霜田氏は日刊ゲンダイにこう語った。
「ジャニーさんのセクシュアリティーと特異性について考慮しないと問題の本質には届かないと思います。告発した元Jr.の橋田康氏は会見で、『今のジャニーズ事務所には、性加害を行う人間はもういないと思っている』と言っていますが、通り一遍の再発防止策などではなく、やはりジャニーさんが、よくも悪くも“やってきたこと”と向き合わなくてはいけないと思います」
ジャニー氏への感謝を口にする人がいる一方、重い被害に悩まされ続ける被害者が存在することは歴然たる事実。いずれにせよ、ファンにとって一番の願いは“安心して応援できる”ことに他ならない。
外部取締役の設置などの改革案を打ち出しているジャニーズ事務所だが、それが画餅とならずに、実現できるか。