トランプ米政権が、中東のホルムズ海峡などでの民間船舶の航行の安全を確保するため、多国籍の有志連合を結成して海上警備・護衛活動を行う方針を打ち出した。2週間程度で参加国を見極めて、任務分担など具体的話し合いに入る。
核問題をめぐるイラン情勢の緊迫化が背景にある。イランに面したホルムズ海峡は日本向け原油の8割強、液化天然ガス(LNG)の2割以上が通過する。日本経済と国民生活にとって生命線そのものだ。
緊張緩和の外交努力はもちろん欠かせないが、それのみで航行の安全は保てない。日本向けタンカーの護衛を他国に任せきりにして、日本は関わらないという無責任な選択肢はとり得ない。
まず、旗幟(きし)を鮮明にすることが必要である。安倍晋三首相は国家安全保障会議(NSC)を開き、国益を踏まえ、同盟国米国の提案に賛意を示してもらいたい。参院選の最中だからといって後手に回ってはいけない。海上自衛隊の護衛艦や哨戒機などの派遣が検討対象となろう。各政党もタンカーをどのように守ればいいのか、具体的見解を示す責任がある。
ペルシャ湾やホルムズ海峡の危機は現実のものだ。日本のタンカーが6月13日、何者かに攻撃された。7月10日には英タンカーが、イラン船から針路を変えてイラン領海付近で停船するよう命じられ、英海軍フリゲート艦が機関砲を向けイラン船を追い払った。
2004年4月にはペルシャ湾で、日本郵船のタンカーなどがテロリストの自爆ボート攻撃にさらされ、米軍に救われた。日本タンカーは軽微な被害で済んだが、米兵2人と米沿岸警備隊員1人の計3人が戦死した。米軍は日本を含む諸外国のタンカーや石油施設を命がけで守ってきたといえる。
その米国が協力を呼びかけている。日本の海上交通路(シーレーン)を守り、かつ中国・北朝鮮情勢をにらみ日米同盟を強固なものとする上でも、自衛隊の派遣を通じて日本が応分の負担をするのは当たり前だ。有志連合は、攻撃を抑止する有効な力にもなる。
政府は自衛隊について、安保関連法により「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目ない」対応ができるようになったと強調してきた。そうであるなら、同法や自衛隊法などを活用して、有志連合参加を実現してもらいたい。