崩れた「鉄のおきて」 不透明になったロシア情勢 ワグネル反乱


崩れた「鉄のおきて」 不透明になったロシア情勢 ワグネル反乱

ロシア南部ロストフ州の南部軍管区司令部から離れるプリゴジン氏=2023年6月24日、ロイター

【緊迫のモスクワ周辺】

 「より重要な目的のために、(ベラルーシの)ルカシェンコ大統領による仲介作業が実った」。ペスコフ大統領報道官は24日深夜、プーチン氏が内戦勃発のような事態を回避するため、ワグネルとの合意を推し進めたことの意義を強調した。ルカシェンコ氏に謝意を表すとともに、現実的な解決策を優先したプーチン氏の決断も称賛した。

 ただ、実情はより複雑だ。「反乱を計画して実行に移した者たちはロシアを裏切った」。プーチン氏は24日朝のテレビ演説でこう語り、プリゴジン氏を反乱罪で処罰する方針に触れていた。わずか半日後に撤回せざるを得なくなり、威信を損なった点は否定できない。

 20年以上にわたりロシアを統治してきたプーチン氏は、多様な政治勢力を自分の下に取り込んできた。一方で、カシヤノフ元首相や、2015年に暗殺されたネムツォフ元第1副首相など、敵対する政治家の復権や影響力拡大は強固に阻止してきた。

 こうした「鉄のおきて」を敷いてきたプーチン政権だが、武装蜂起したプリゴジン氏については隣国への出国を促す形で存在を許す結果となった。プーチン氏が弱みをのぞかせたことで、今後のロシア情勢は不透明になったといえる。

 ロシアでは9カ月後の24年3月に次期大統領選が予定されている。プーチン氏が通算5期目に挑むとみられるが、今回の混乱がボディーブローのように響く可能性も否定できない。【モスクワ大前仁】



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