アメリカのトランプ大統領は、新たに8カ国に対し、相互関税の税率変更を通知したと発表しました。来月1日の適用期限を延長しない意向も改めて表明しています。こうした一方的な通商措置に対し、日本の石破茂総理大臣はこれまでになく強い言葉で反発の姿勢を示しています。この動きは、各国の経済に明暗を分ける可能性があります。
トランプ大統領が8カ国に新たな関税率を通告
日本時間の10日未明、トランプ大統領は自身のSNSに連続して投稿し、新たな相互関税の税率変更を通知する書簡を公開しました。最初に明らかにされた7カ国に対しては、20%から30%の範囲で税率が提示されており、当初の税率から引き下げられた国もあれば、引き上げられた国もあり、対応によって状況が異なっています。公開された書簡は、宛名や具体的な税率を除けば、ほとんど同じ文面でした。その後、ブラジルに対しても新たな税率が提示されました。
トランプ大統領はブラジル宛ての書簡を公開し、「アメリカに入ってくるすべてのブラジル製品に50%の関税を課す」と記しました。これは当初10%としていた税率から大幅な引き上げとなります。ブラジルへの書簡は、他の国へのものと比べて長く、現在のブラジル政権に対する不満などが税率変更の理由として挙げられています。トランプ大統領は以前、これらの措置について「これまで大して苦情は出ていません。なぜなら非常に低く、保守的な税率に抑えたからです」と述べていました。
石破総理「国益をかけた戦い」と強く反発
トランプ大統領による新たな関税措置に対し、日本の声は届いているのでしょうか。石破総理は9日、記者団に対し、これまでにないほど語気を強めて対応への決意を示しました。石破総理は「これは国益をかけた戦いです。なめられてたまるか」と述べ、たとえ同盟国であっても、言うべきことは正々堂々と言うべきだと強調しました。
アメリカの関税政策に対する怒りや懸念を感じているのは、日本だけではありません。マレーシアのアンワル首相は、ある国際会議の場で、具体的な国名を挙げなかったものの、「関税や輸出制限、投資障壁は地政学的な対立の鋭い道具になっている」と述べ、トランプ大統領の貿易政策を暗に批判しました。
新たな標的:医薬品に200%の関税を宣言
これらの動きに先立ち、トランプ大統領は世界に向けて新たな関税の対象を発表しました。それは医薬品です。トランプ大統領は「医薬品をアメリカ国内に持ち込む場合は、関税が課されることになる。とても高い税率で関税をかける。200%のように」と述べ、高い関税を導入する方針を明らかにしました。医薬品への関税導入には1年から1年半の猶予期間を設けるとしています。「アメリカで作れば、関税を支払う必要はない」と述べ、国内生産を促す狙いがあることを示唆しました。

春から予告されていた医薬品への高関税は、日本の輸出にも大きな影響を与える可能性があります。日本からアメリカへの医薬品輸出額は年間4000億円以上にのぼり、国別で見るとアメリカが35.5%を占める最大の輸出先となっています。野村総研のエグゼクティブ・エコノミストである木内登英氏は、医薬品に200%もの関税がかかる場合、日本からアメリカへの輸出はほぼなくなるだろうとの見通しを示し、日本経済にもマイナスの影響が出てくると指摘しています。
出典: テレビ朝日