ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏=4月8日、モスクワ(ロイター時事)
ロシアの民間軍事会社ワグネルが武装反乱を起こして7日で2週間。
事態は沈静化したが、創設者プリゴジン氏の影響力を低下させるキャンペーンが国営メディアで始まった。来年のロシア大統領選への「介入」を阻止したいプーチン政権の意向がうかがえるが、プリゴジン氏側は抵抗の動きも見せている。
【写真】ロシアの民間軍事会社ワグネルの拠点
◇犯罪組織と同列
銃器に偽造パスポート、金塊、白い粉―。
国営テレビは5日、反乱後に当局が実施したプリゴジン氏の関係先の家宅捜索の映像を公開した。舞台となったのは同氏が拠点とする第2の都市サンクトペテルブルク。押収物の写真は、地元メディア「フォンタンカ」も6月下旬に伝えていた。
反乱前まで、ワグネルの話題は扱わないのが国営テレビの「基準」。大々的に報じた背景には、実業家プリゴジン氏の会社を「犯罪組織」と同列に扱い、ウクライナ侵攻の戦果と積極的なSNS発信を通じて保守派からの支持を集めたプリゴジン氏の人気をおとしめる狙いがありそうだ。
フォンタンカによると、現金100億ルーブル(約155億円)を含む押収物は本人に返還。政権は事態収拾の見返りに「捜査中止」を約束していた。
ただ、プリゴジン氏側は家宅捜索に不満を隠しておらず、SNSを通じて「白い粉は洗剤」「(プーチン大統領の邸宅のように)豪華でない」「偽造パスポートはロシア軍情報機関が交付したものだ」と毒づいた。
◇支持率は3割
愛国的な保守派の一部は、プーチン氏を支持しつつも、ロシア軍の劣勢でショイグ国防相らに嫌気が差し、プリゴジン氏の「フォロワー」になった。独立系世論調査機関によると、プリゴジン氏の支持率は反乱前後で58%から29%に半減したが、人気はまだ地に落ちていない。
プリゴジン氏は、事業整理を進めており、2016年の米大統領選介入に使った会社「インターネット・リサーチ・エージェンシー」は解散。しかし、プリゴジン氏が保守派に一定の人気を保ったままロシア大統領選に突入すれば、プーチン氏の票が奪われると政権が判断している可能性がある。
「今はサンクトペテルブルクにいる」。反乱を仲裁したベラルーシのルカシェンコ大統領は6日、プリゴジン氏が合意事項の「出国」に応じていないことを示唆した。
ロシアのペスコフ大統領報道官は「追跡していない」と説明し、ルカシェンコ氏も「(プーチン政権は)殺すことはない」と述べたが、プリゴジン氏と政権の緊張は尾を引きそうだ。