タイで挑戦を続ける元サッカー選手とタレントの夫妻=6月23日、バンコク
福岡出身の元サッカー日本代表とタレントの夫妻がタイに渡り、動画投稿や起業など新たな挑戦を続けている。今の目標は、夫の大好きなドリアンの農園経営。肩の力を抜いて、タイ生活を満喫しながら、二人三脚で生きていく。
【画像】ドリアンを食べる様子などを発信している坂井さんのユーチューブ動画
夫妻は坂井達弥さん(32)と夏美さん(30)。福岡市出身の達弥さんは強豪東福岡高のサッカー部主将を務め、鹿屋体育大(鹿児島県)を卒業後、Jリーグ・サガン鳥栖などで活躍。2014年には日本代表に選出された。福岡県筑前町で生まれた夏美さんは元ミス福岡大で、地元でタレントとして活動。知人を通じて出会った2人は18年に結婚した。
タイと縁ができたのは達弥さんの移籍がきっかけ。モンテディオ山形を退団した後の20年1月、誘いを受けたタイリーグのチームに移り、現地で約2年間プレーした。「海外という選択肢も模索していて、妻も背中を押してくれた」。この2年で、タイの人々の優しさや周囲をあまり気にせずに生活できる環境に「完全にはまってしまって…」と達弥さんは笑う。
動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信を始めたのは20年4月。新型コロナウイルス禍のため、帰国が困難な状況で「心配する親や友達に近況を報告するような気持ち」(夏美さん)からだった。動画編集や配信の方法はユーチューブで勉強。2人の暮らしぶりやタイの観光地、食文化などを紹介するチャンネル「たっちゃん&なっちゃん」ではこれまでに約290本の動画を配信、登録者数は約4万5千人に上る。
達弥さんは「日本だと恥ずかしいからユーチューブはやっていなかったと思う」。タイでは副業をするサッカー選手が多く、抵抗感はほぼなかった。
チームを昨年4月に離れた後も2人はタイに残る道を選んだ。サッカーチームのオーナーや起業家として活躍する女性も多く、夏美さんは「タイの人々はそれぞれが自分らしく、自信に満ちあふれているところに引かれた」。達弥さんは「生活で困ったことはないです。みんな、いろいろ教えてくれますから」とマイペースな面をのぞかせる。
夏美さんが「夢見るサッカー少年」と例える達弥さんの目標はドリアン農園の経営。「大人になって衝撃を受けることってあまりないじゃないですか。ドリアンのうまさで、その驚きを味わい、多くの日本人に広めたいと思った」
達弥さんは栽培方法などを専門家から勉強中。夏美さんは日本での結婚式の司会業の経験を生かし、タイで結婚式や祝賀イベントをプロデュースする会社を立ち上げて経済的に夫の挑戦を支えている。
福岡で豚骨ラーメンが食べたくなる時はあるが、「夢に向かって進むだけです」と達弥さん。夏美さんは「私は口座の預金が減っていくのを見て落ち込んでいます」と言いつつも、表情は明るい。2人は手を携え、南国での挑戦を楽しみながら、仲むつまじく歩いていく。
(バンコク稲田二郎)
西日本新聞