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「教育施設への強制収容」「虐待、拷問」。中国の「人権問題」の象徴として今、世界の注目を集める新疆ウイグル自治区。JNN北京支局カメラマンとして10年ぶりに訪れた新疆で、私が見たもの。それは「中国化」と引き換えに発展する街並みと、沈黙を守る人々だった。その姿は、10年前、私を新疆に導いたある友人の存在を思い起こさせることになった。
(前編・後編のうち前編)
【写真を見る】「自分は中国人でウイグル族」10年前に出会ったウイグル族の友人が新彊で初めて見せた“緊張”
■「自分は中国人でもありウイグル族でもある」友人が打ち明けた“板挟み”の胸中
2012年、私は中国・北京の大学に留学をしていた。
夏の終わり、客でごった返すビールバーでたまたま相席になったのが新疆ウイグル自治区から来たウイグル族の大学生、アクバル(仮名)だった。漢族とは異なる薄い色の目、エキゾチックな顔立ちのハンサムな彼は流暢な中国語を話した。
私にとって彼は初めて出会うウイグル族。彼にとって私は初めて出会う日本人。同年代の私たちはお互いのバックグラウンドに興味を惹かれ、初対面にも関わらずあっという間に打ち解け、友達になった。
イスラム教徒なのにビールが大好きなアクバルとはいつも同じバーで落ち合った。仲良くなるにつれ、中国で暮らす少数民族として感じる生きづらさを、時折打ち明けてくれるようになった。
ウイグル族はパスポートの取得が漢族よりも難しいこと。新疆の街中にはウイグル族を監視するたくさんの武装警察官がいること。学校では中国語の使用比率が高まり、ウイグル独自の文化が希薄になりつつあること。
ウイグル族など中国で暮らす少数民族が様々な問題を抱えていることは知っていたが、当人から聞く話は私にとって驚きの連続だった。
アクバルは、将来はエンジニアとして故郷の役に立つ人になることが目標だと語った。
今の恵まれた教育環境について感謝を口にする一方、2009年に漢族とウイグル族が衝突し多数の死者を出したウルムチ騒乱が起きて以降、中国政府のウイグル族に対する締め付けが強まっていることに胸を痛めていた。