今年の韓国の夏は雨が多く蒸し暑い。雨も近年は日本と同じで局地的にドッと降るので被害が多い。暑気払いを兼ね、転勤で帰国する日本人ビジネスマンの歓送飲み会があり、その席でくだんのビジネスマンが「竹夫人、連れて帰るか、思案中」という、俳句とも川柳ともつかない即興句を紹介し盛り上がった。
彼は単身赴任だったのだが「竹夫人(チュクプイン)」というのは人ではない。竹を編んでできた長枕のようなもので、それを抱いて寝ると涼しいという伝統工芸品の一種。日用品として今でも結構売っている。日本の「抱き枕」に似ているが、枕ではないので長さは150センチほどにもなる。名称の面白さもあって韓国の夏の風物詩としてほほえましい。
筆者も韓国生活の初期、好奇心から買ったことがあるが、当然ながら扇風機やエアコンに代わるものではない。狭いワンルーム暮らしにはじゃまなので引っ越しの際、捨ててしまった。ただ、イメージとしては涼しいから置物にいいかも。
盛夏到来を意味する「初伏(チョボク)」の11日、暑気払いの元気づけにいいという「参鶏湯(サムゲタン)」屋は満員で、みんな額に汗を浮かべフウフウいいながら食べていた。韓国人は暑い時に熱いものを食って「シウォネ(涼しい、スカッとする)!」と声を発する。この暑さ退治を「以熱治熱(イヨルチヨル)」という。(黒田勝弘)