「毎月1万円」全員に無条件給付 ベーシックインカムへの第一歩

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特別定額給付金の申請書が入った大量の封書の開封などをする市職員たち=富士市消防防災庁舎の大会議室で2020年6月5日、長沢英次撮影

 「ベーシック・インカム入門」などの著書がある同志社大学経済学部教授の山森亮さんは、たとえば月1万円、年間12万円からでもはじめれば、社会が変わると言います。【聞き手・須藤孝】

【写図】社労士の暗躍も コロナ助成金不正

 ◇ ◇ ◇ ◇

 ◇女性解放運動から

 ――ベーシックインカムは社会的な不公正に対抗するものだと指摘されています。

 山森氏 ベーシックインカムのような考え方は18世紀末ごろまでさかのぼれます。現在の英国にあたる地域で、大地主や産業資本家が共有地を囲い込んで私有化します。対抗するために、対価をすべての人に同じ額払えという主張が出てきました。

 現在のベーシックインカム論の直接の源流の一つは、1960~70年代の英国での労働者階級の女性解放運動にあります。家事や育児、介護など女性の労働に対価が支払われないことや、性別役割分業そのものを問い直す中で、ベーシックインカムが主張されました。

 ――現在の社会を前提とした条件は公正ではないから、無条件なのですね。

 ◆憲法25条には健康で文化的な最低限度の生活を送る権利があると書いてあります。当然、この権利は無条件ですべての人にあります。

 しかし、実際には生活保護をはじめとして日本の制度設計は無条件にはなっていません。まず、理念として無条件に全員が所得を保障されるべきだと認めなければなりません。

 ――現実はそうなってはいません。

 ◆日本では生活保護基準以下で生活している人の約2割しか実際には生活保護を受けていません。基本的人権を経済的な意味で保障する仕組みとしては破綻しています。本来であれば政治家は、生活保護の予算と受給者を5倍にすることを目指さなければならないはずです。

 ◇個人の生きる権利

 ――個人に、というところも大切です。

 ◆コロナ禍の際の特別定額給付金は1人あたり一律10万円とされながら、原則として世帯主の口座に振り込まれました。男性が家を代表していて、女性はその付属物であるいう考え方が日本の制度設計には色濃く残っています。生存権はそもそも個人の権利ですが、世帯中心の日本の制度のなかでは個人の権利が保障されていないのです。

 ――生きることに条件はないはずですが。

 ◆どんな家族関係であろうが、生存権は一人一人の個人に保障されているはずです。これがなかなか認められません。生活保護でも、(親族に扶養が可能か照会する)扶養照会のようなものがあります。行政に関わる人たちの問題ではなく、仕組みから来ています。

 ◇財源はどうする

 ――財源はどうするのでしょうか。

 ◆所得税の累進課税を強化する案もありますが、数年ではなく数十年単位の時間がかかります。さまざまなやり方を探りながら、ゆっくり導入しなければなりません。

 ――どこから始めるのですか。

 ◆一つは既存の制度をベーシックインカム的なものに変えていくことです。児童手当の所得制限撤廃もベーシックインカムへの一歩です。基礎年金部分を全額税で賄えば「65歳以上のベーシックインカム」と言えるでしょう。

 ――趣旨からいえば、月10万円でも足りないという指摘があります。

 ◆生活の基本的(ベーシック)な部分を保障するというベーシックインカムの趣旨からすると指摘の通りです。とはいえ実験的に少額の無条件給付を導入することも意味があるでしょう。

 月1万円、年間12万円からでもいいのです。私たちはいま、おカネがなければ誰も生きることが保障されない日々を生きています。「憲法に書いてある」と言われてもピンとこないでしょう。

 実際に、無条件で全員に毎月1万円配れば、それ自体はベーシックインカムとは言えなくとも、社会を変える第一歩になると思います。

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