安倍元首相、会計責任者に「ただちに直せ」と激怒。自民パー券疑惑、岩田明子氏が緊急取材。「裏金」は細田派時代の悪習だった

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今年5月に行われた安倍派のパーティー。裏金疑惑で自民党最大派閥が揺れている=東京都港区 (松井英幸撮影)

自民党派閥の政治資金パーティー券疑惑で、最大派閥・安倍派(清和政策研究会)の複数議員が最近5年間で、1000万円以上のキックバック(還流)を受けて、裏金化していた疑いがあることが分かった。東京地検特捜部は13日の国会閉会後、議員らの一斉聴取に乗り出す構えだ。ただ、別の派閥でも政治資金収支報告書への不記載・過少記載は告発されている。「裏金」も「不記載・過少記載」も不適切な処理であることは同じで、国民の「政治とカネ」への不信感は強まるばかりだ。ジャーナリストの岩田明子氏が緊急取材したところ、安倍晋三元首相が初めて派閥領袖(りょうしゅう)に就任した2021年11月より前から同派の悪習は続いており、それを知った安倍氏は激怒し、対応を指示していたという。

自民党の主な”疑惑”の議員

自民党派閥の政治資金パーティー裏金疑惑は、岸田内閣の要である松野博一官房長官ら、安倍派所属議員の「政務三役」更迭が不可避という事態にまで発展した。21年10月の内閣発足以来、最大のピンチといえる。

1988年のリクルート事件や、92年の東京佐川急便事件など、相次ぐ「政治とカネ」の問題に国民の厳しい批判が集まり、自民党は93年に下野した。あれから30年、自民党は「政治資金をめぐる問題で対応を誤れば政権を失う」という苦い教訓を忘れているのではないか。

今回の疑惑で特に深刻なのが、最大派閥の安倍派だ。実質派閥トップの座長である塩谷立元文科相をはじめ、松野氏、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長、萩生田光一政調会長、西村康稔経産相ら幹部6人側が、パーティー券の販売ノルマを超えた売り上げについて、派閥からキックバック(還流)を受けていたとみられることが報じられた。

関係者に取材すると、細田博之前衆院議長がトップだった細田派時代(2014~21年)、現金で還流した分を政治資金収支報告書にどう記載するかについて、派として統一方針が提示されることはなかったという。

派内からは「このままでいいのか」と疑問の声が上がっていたが、細田氏側からは明確な指示は示されなかった。

安倍元首相が21年11月に初めて派閥会長となった後、翌年2月にその状況を知り、「このような方法は問題だ。ただちに直せ」と会計責任者を叱責、2カ月後に改めて事務総長らにクギを刺したという。

22年5月のパーティーではその方針が反映されたものの、2カ月後、安倍氏は凶弾に倒れ、改善されないまま現在に至ったようだ。

別の派閥では、過去の問題を踏まえ、還流分を現金で渡さず、各議員の政治団体の口座に振り込んでいたと聞く。それに比べると、安倍派の処理は雑であり恐れを知らぬものだった。幹部にそろって疑惑が発覚した安倍派は「解体的出直し」が不可避だろう。

自民党5派閥のパーティー券疑惑は昨年11月、「しんぶん赤旗」が報じた。神戸学院大学の上脇博之教授による告発を受け、今年11月から報道各社が報じ、党内の幹部からは迅速な対応を求められていたが、岸田首相の危機感は驚くほど薄く、時間だけが経過した。

低空飛行が続けば国益損なう

岸田首相は11月27日の参院予算委員会で、「宏池会(岸田派)としては訂正を要するような案件はなかったと報告を受けている。他派閥の政治団体についてはそれぞれ独立して会計を行っているので、責任を持って説明をするべきであると考えている」と述べた。

歴代首相の多くが派閥を離脱してきたのに、派閥にとどまり続けた総裁ならではの発言だろう。それにしても、なぜ、自民党総裁として「すべての派閥の膿を出し切る」と言えなかったのか。

今回の問題は本来、「内閣総辞職に相当する出来事」との指摘も多いが、岸田首相自身は周辺に続投の意向を示している。

ある中央省庁の幹部は最近、岸田首相から「(いい政策が)何かないか」と聞かれて驚いたという。首相には「日本のために、この政策を実現しなければならない」という使命感は感じられない。有力な「次の総理」候補がいないという事情だけで、低空飛行の政治が続くことは、変化の激しさを増す国際情勢の中で、日本の国益を損なうのではないか。

岸田首相は7日、「私自身が先頭に立って、政治の信頼回復に向けて努力したい」と語った。だとすれば、政治生命をかけて自民党再生策を打ち出し、即座に取り組むべきだ。言葉だけでなく、現実の行動に移さなければ、国民の信頼を取り戻すことなどできない。

Source: 日本ニュース24時間