
中国国内では日本産水産物の争奪戦が起こっている
東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐり、中国で日本からの水産物に対し全面的な放射性物質検査を始めた問題についてです。この影響で、輸入が滞り、中国国内では今ある日本産の水産物の争奪戦が始まっているといいます。現場を取材しました。
上海市内にある「日本料理店 暖岸」。メニューはおまかせのコースのみ、客単価はおよそ2万円の高級店です。活け締めした日本の旬の魚を水揚げから2日以内に取り寄せ提供してきました。
「業者から7月12日あたりに連絡がきて、『今回は最後だよ。(注文を)取らないと日本の魚がしばらく止まるかもしれないよ』と話があった。その直後に(入荷が)止まった」(「日本料理店 暖岸」趙剛オーナー)
放射性物質検査に日数がかかるため、冷凍ではない活け締めの魚の輸入は不可能に。「暖岸」では、今は中国各地から鮮度の良い魚を探し提供しています。
「今まであまり取り扱っていない中国の魚になってしまうと、一部メニューをどうしても変えざるを得ない」(趙剛オーナー)
一方、同じ上海市内にある食品を扱う商社「福澤交洋貿易」。日本各地から海産物を輸入し、中国全土2000の飲食店に食材を卸しています。
ホタテは北海道産。他にも同じ北海道産のイクラや、沖縄産のもずくなど、倉庫には検査が強化される前に、日本から輸入した冷凍の水産品が並びます。
「(検査強化の)情報が出てから、みんな不安になって物を取り合い始めている」(福澤交洋貿易の畢重偉社長)
通常、冷凍品は中国の港に到着してから1週間ほどでこの倉庫に届きますが、中国政府は強化した検査に1カ月かかると通知。在庫切れを恐れた飲食店から注文が殺到し、既に売り切れた商品も出ているのです。
さらに畢社長は「箱を開けて検査をする。温度が変化することで品質は少し変化する。保存期間が1カ月、さらに2カ月延びるため、製品への影響は小さくない」と今後について心配しています。
和食がブームとなる中、中国の日本料理店はおよそ7万3000店まで増加。処理水の放出が始まれば、影響は計り知れないと言います。
「いったんこの方針(処理水放出)を実行したら、われわれの日本料理のサプライヤーにも、さらに日本料理の全体のシステムにも大きな打撃を与える」(畢社長)