地政学・戦略学者の奥山真司が8月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。生産額ベースで過去最低を記録した食料自給率について解説した。
食料自給率が生産額ベースで過去最低
米海軍の原子力空母ロナルド・レーガンを訪問し、記念撮影に臨む浜田防衛相(左から3人目)、岸田文雄首相(同5人目)ら =2022年11月6日午後2時40分、神奈川県沖の相模湾 写真提供:産経新聞社
国内の食料をどのくらい国産で賄えているかを示す食料自給率が、過去最低となったことがわかった。農林水産省によると、2022年度の食料自給率は、生産額ベースで2021年度を5ポイント下回り、58%で過去最低となった。一方、カロリーベースの食料自給率は、前年度と同じ38%だった。農林水産省は2030年度までに生産額ベースの自給率75%、カロリーベースの自給率45%を目指すとしている。
飯田)円安などが影響したというようなことが言われていますが。
海の安全が守られている限り、日本は食料自給率を気にしなくていい ~食料自給率を低く抑えることが可能なのは海外と貿易しているから
奥山)この話は食料安全保障ですよね。私は、基本的に自給率が低いことはあまり心配していません。海の安全が守られている限り、日本は食料自給率を気にしなくていいと思います。
飯田)海の安全が守られている限りは。
奥山)なぜ我々は食料自給率を低く抑えることが可能なのかと言うと、基本的に海外と貿易をしているからです。
飯田)貿易をしているから。
奥山)日本は国内で食料をたくさんつくれる状況ではありません。開かれた海があるからこそ、食料自給率も低く抑えられているのが現実です。
世界の貿易体制は海を担っている米海軍が健在な限り、日本も食料は大丈夫
奥山)問題は、地政学で言うところのシーパワーの話です。
飯田)シーパワー。
奥山)アメリカの海軍力が落ちているのではないかという心配があります。世界で自由貿易体制ができているのは、アメリカの海軍があるからです。これがある限り、日本も食料は大丈夫だと思います。
飯田)アメリカ海軍が健在な限り。
奥山)この海の貿易体制の安全性は、究極的には海の安全を担う米海軍が守っている。
世界には既に秩序があるからアメリカが世界から撤退しても大丈夫か
奥山)イギリス留学中、国際的に有名なプリンストン大学の教授であるG・ジョン・アイケンベリーさんが、あるシンクタンクで講演しました。アイケンベリーさんは、いまアメリカが世界の秩序を支えていると言われていますが、「既に世界にはある程度の秩序があるから、アメリカが世界から撤退しても大丈夫だ」と言う人でした。
飯田)アメリカが撤退しても大丈夫だと。
奥山)「世界の貿易体制の秩序は保たれる」という楽観的な考え方をする方なのです。その方がイギリスに来て、イギリスのシンクタンクでそのような講演をしたのです。
飯田)アイケンベリーさんが。
奥山)そこにはイギリス海軍の元士官の方など、イギリスの海軍関係の方が多かったのですが、講演のあと、アイケンベリーさんはイギリス海軍の元士官の方たちに批判されたのです。
飯田)イギリス海軍の元士官の人に。
奥山)彼が「アメリカが撤退しても世界のリベラルな秩序は続く」と言ったあと、質問コーナーで、イギリス海軍の方が「嘘をつけ、世界の秩序を守っているのは究極的には米海軍だろう」と。「米海軍がいるおかげで世界の海上貿易は支えられているのだ。それをお前は認めないのか。秩序を守っているのは米海軍だと言え」と、私の前で言うのです。
飯田)大衝突ですね。
奥山)このイギリス海軍の方が言うこともわかります。米海軍が秩序を担っているという意識が彼らにはある。「海の安全があるからこそ、我々は低コストで海外からいろいろなものを持ってこられるのだ」という意識を持っている。
飯田)米海軍が秩序を担っているから。