見直し迫る中国に「待った」も限界か
FNNプライムオンライン
年末に交渉期限を迎えるIMF=国際通貨基金の資本増強に向けた各国の協議(クオータ改革)が大詰めを迎えようとしている。IMFは、2017年、途上国や新興国の経済発展に伴う債務の増大など各国の金融危機に対処するため、融資の資金基盤を現在の1兆ドルから拡充することを決めた。しかし、2019年10月に結論の先送りを決め、決定時期が今年12月まで延期された。先送りの背景には、国際機関にも及ぶ中国の影響力拡大への懸念もあったとされる。IMF関係者は「一度先送りされているので、今回は何らかの形で結論を出さざるを得ない」と口をそろえる。
【画像】米中対立“激化”の懸念も…ワシントンDCのIMF本部
189の国が加盟するIMFは、各国からの出資金を使い、経済危機に陥った途上国や新興国に融資を実施していて、それらは、主に債権国への借金の返済に充てられている。
IMFは、国連のような一国一票制ではなく、各国の出資比率に応じて投票権が割り当てられている。現在は、2010年の見直し協議で決められた比率が維持されていて、米国が17.43%、2位の日本は6.47%、3位の中国が6.40%と日本に肉薄している。しかし、GDP=国内総生産で日本を上回り、アメリカに次ぐ2位に躍り出た中国は、10年以上前に決められた算定基準に不満を示し、出資比率の見直し(改定)を訴え続けているのが現状だ。
これを踏まえ日本政府関係者からは「もう中国から逃れられないかもしれない」との声も挙がっている。
米中対立“激化”の懸念
今後、出資比率が見直されると、どうなるのだろうか。仮に中国が日本を上回り、2位になると意思決定を行う理事会で中国の発言権が増大する。「その場合、融資先(国)決定を巡る米中対立が激化しかねない」とIMF関係者は不安を吐露する。
さらにIMFの重要事項の決定には、投票権を持つ国の85%以上の賛成が必要なため、現在、15%超の投票権の比率をもつ米国は、事実上の拒否権を持つ。しかし、今後、米国の出資比率が15%を下回り、単独での拒否権が失われると、これまで米国の出方をうかがってきた各国からは、想定外の提案がされるなど世界の経済政策の意思決定が混迷する可能性もあるという。従来の欧米と日本主導の意思決定の流れが崩れてしまうことも想定される。
また、2030年にもGDPでG7(主要7カ国)を逆転するとも予想されるインドやロシア、ブラジル、インドネシアと言った新興国によるIMFへの出資比率の増加とともに発言権が増大していけば、G7の立場が相対的に弱くなることが予想されるほか、ロシアによるウクライナ侵攻で浮き彫りとなったG20(主要20カ国・地域)、同様に国際協調の乱れが出てくることも想定しなければならないという。在ワシントンのシンクタンク関係者は、中国によるいわゆる“債務の罠“問題を例に挙げ「国際金融秩序も経済安全保障の観点から、重要になってくる」と話す。実際、IMFでは、債務危機に陥る国々への対応の協議が進められているが、中国が独自の立場を主張し、支援方針を巡って米国などと対立するケースも少なくないという。