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女性が見つかった場所。山の斜面にいたという=2023年8月1日、京都府伊根町、富田祥広撮影
山を背にした海岸線に、家々が肩を寄せ合うように並ぶ京都府伊根町の伊根湾に面した「舟屋のまち」。
【写真】姿を消した女性が発見された場所
町が各世帯に配布しているタブレット端末の回覧板に、1本のお知らせが一斉に配信された。
〈高齢者の行方をさがしています〉
町は高齢者の親族の了承を得て、名前や年齢も町民に伝えた。
伊根診療所長の石野秀岳(ひでたか)医師(49)は、そのお知らせに目をとめた。
行方が分からなくなったのは、幼い頃から知っている70代の女性だった。
7月6日、木曜の午後7時20分ごろのことだ。
ちょうど日の入りの時刻で、舟屋の町並みはこれから闇に包まれていく。
診療を終えたのは午後8時ごろ。すぐに自宅近くまで戻ると、大勢の消防団員や警察官らが大声を出しながら、まばゆいライトで山の木々を照らしていた。
自宅前まで来た、その時だった。
向かいの家の女性が玄関先で、石野さんの自宅の上のほうを見ながら言った。
「山から声がするで」
〈うちの? 裏山で?〉
石野さんは消防団員や警察官を大声で呼びながら、自宅横の階段を駆け上って裏山に入っていった。
「おーい、おーい」
返事は聞こえない。
「おーい、おーい」
……「はずしてーなー」
聞こえた!
山の斜面のやぶの中で、のり面にずり落ちそうになっている女性がいた。
駆け寄ると、足に植物のつるが絡まって動けないようだった。それを「外してほしい」と言っていた。
すぐに消防団員と警察官もやって来た。
宮津署と町総務課によると、女性はこの日午前、地区内にある寺へ親族と一緒に墓参りに出かけた際、行方が分からなくなった。
警察に捜索依頼があったのは午後5時半ごろ。伊根駐在所から消防団に対して6時すぎに協力要請があり、6時45分ごろから消防団員と警察官らが約30人態勢で捜索を続けた。
急斜面の山すその海岸線に舟屋の町並みがあり、すぐ目の前に海が広がる。町総務課の担当者は「通常は二次被害を避けるために日没後は捜索を打ち切るが、今回は寺の周辺という具体的な情報があったので捜索を続けた」と話す。
寺から発見場所までは直線距離で約300メートル。しかし、「半日ほど山中の旧道を歩いたとすれば、1キロほどうろうろしたのではないか」と石野さんは言う。女性は幸い、かすり傷を負った程度だった。
生まれ故郷の診療所に勤めて10年。人口約2千人の町は高齢化が進む。「人と人とのネットワークが強く、日ごろ高齢者を町ぐるみで見守る機能は都会より強い。ただ人口密度が低いので、いったん行方が分からなくなった人を地元の人たちだけで見つけ出すのは難しい」と石野さん。「今回は本当に幸運だった。見つけられてほっとした」
石野さんと消防団は、女性の早期発見と保護に貢献したとして、宮津署長から8月1日に感謝状を贈られた。(富田祥広)
朝日新聞社
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