イベサーの世界:ギャル男から大学助教になった男のカムバックストーリー

イベサーの実相

荒井悠介さん

 「ギャルの時代はロクな時代じゃなかった」――。若い世代で人気が再燃した「平成ギャル」。一時代を作った、彼女・彼たちの夜を彩ったのはクラブと呼ばれた場所などを中心に活動する「イベントサークル(イベサー)」だった。多くの若者たちを夜の世界に引き込み、熱狂させたイベサーとはなんだったのか。イベサーのトップに上り詰めた大学の「先生」に話を聞くと、平成ギャルの実相が見えてきた。(デジタル編集部 古和康行)

「先生」は元イベサーの代表

東京都日野市の明星大学

取材に応じた荒井さん。研究室には資料のギャル雑誌が詰め込まれていた

 東京都日野市の明星大学の一室に、荒井悠介さん(41)の仕事場がある。彼は人文学部の助教であり、かつてはイベサーとして活躍していた経験も持つ。「荷ほどきができなくて……」と腰痛を訴えているが、本棚にはかつてのギャルの「バイブル」として名高かった雑誌がぎっしりと詰まっている。

 荒井さんは研究手法として「参与観察」を用い、イベサーの活動や人間模様などを研究してきた。その成果をもとに、「ギャルとギャル男の文化人類学」(新潮新書)や「若者たちはなぜ悪さに魅せられたのか――渋谷センター街にたむろする若者たちのエスノグラフィー――」(晃洋書房)といった著書を発表している。

 実は、荒井さん自身も大学在学中にイベサー「ive.」(イブ)の4代目代表として活躍し、単独イベントでは1300人を集客した経験があるのだ。

イベサー加入1年目の荒井さん(左)

イベサー加入1年目の荒井さん(左)※画像は一部加工しています

 22年前の2001年4月21日、荒井さんは初めて渋谷センター街の「ギャル男」になった。渋谷はギャル文化の中心地であり、荒井さんにとっては憧れの場所だった。明治大学に進学した荒井さんは、イベサーの世界に触れ、同じ系統の組織であるイブに参加するようになった。

 先輩から「悠介、あそこでたまっているギャルたちに行ってこい」と指示され、ギャル男たちとの初めての出会いに挑戦した荒井さん。彼のナンパは冗談交じりの声かけで始まったが、返ってきた反応は予想外だった。真っ黒に日焼けしたギャルの言葉遣いは丁寧で、名刺まで渡された。自分の所属するイベントサークルが既にバレていることに戸惑いながらも、興味が湧いた。その日から、荒井さんのイベサーへの没入が始まった。

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