【主張】安倍総裁会見 国民に分け入り憲法語れ


 安倍晋三首相が、自民党総裁としての記者会見で、参院選の争点だった憲法改正について「少なくとも議論は行うべきであるというのが国民の審判だ」と述べ、改憲論議の促進を与野党に呼びかけた。

 「憲法改正案の策定に向かって、衆参両院の第1党として、わが党は力強いリーダーシップを発揮していく決意だ」とも語った。与野党の枠を超えて3分の2の賛同形成に努める考えを示した。

 自民党が憲法改正に積極的に取り組むとした、安倍首相の表明を歓迎したい。ただし、これを意気込みの披露に終わらせてはなるまい。首相の任期は令和3年9月末までである。意欲だけ示しても憲法改正は間に合わない。

 安倍首相は6回続けて国政選挙で勝利した。これまでも憲法改正実現の期待が高まったが、野党の抵抗で尻すぼみとなる繰り返しだった。安倍首相と自民党に、国民に直接働きかける努力が足りなかったからだ。そのため、憲法改正に前向きな勢力が衆参で3分の2を占めても生かせなかった。その反省を踏まえた新たな行動が必要となっている。

 憲法改正原案づくりから改正の発議までは国会の仕事である。首相が衆参両院の憲法審査会を重視し、そこでの論議を促したのは当然だ。

 だが、それだけでは十分ではない。与党公明党も含め、憲法改正の具体的進展に消極的な政党が多い。第1党の自民党だけでできる話ではないのである。

 国民投票にとどまらず、国会における議論を促進するためにも国民世論の後押しが欠かせない。参院選は終わったが、今こそ国民の間に分け入り、なぜ憲法改正が必要かを丁寧に説き、力添えを願うべきだ。世論の理解を広げられるかが改正の鍵を握る。

 今回の参院選の結果、憲法改正に前向きとされる勢力が3分の2を割り込んだのは残念だった。だが、そもそも特定案のもとに改憲勢力がまとまっていたわけではない。3分の2を下回ったからといって憲法改正への取り組みを後回しにする理由にはならない。

 首相が会見で指摘したように、国会の憲法審査会において改憲論議を進めるべきだとした与党側が、改選過半数を大きく上回る議席を得て勝利した。野党はこの審判、民意を尊重すべきだ。



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