父親が「ヘリコプターペアレント」? 札幌ススキノのホテル殺人事件で注目される親子関係

容疑者父子の「お互いの依存関係」

札幌市の繁華街ススキノのホテルで、今年7月に男性(62)が殺害され、遺体が切断された事件において、無職の田村瑠奈容疑者(29)=同市厚別区=と田村容疑者の両親が殺人の疑いなどで逮捕されました。この事件において、容疑者の父であり精神科医の修容疑者(59)が、瑠奈容疑者がクラブで談笑する際に、娘をそばで監視していたと報道されています。識者たちは、容疑者父子の関係性について「ヘリコプターペアレント」との見方を示しています。

容疑者父子は、これまでの北海道警札幌・中央署捜査本部の調査によれば、事件に使用されたこぎりやナイフなどを共同で購入していたことが明らかになりました。また、瑠奈容疑者が殺害を実行した一方、修容疑者は瑠奈容疑者を殺害現場のホテルまで車で送迎するなど、共犯関係にあったとみられています。

「瑠奈容疑者がクラブに行く際には、常に父親(修容疑者)が近くにいた。彼女を常に見守り、何かあれば助ける環境を整えていたのかもしれません。そのような意味で(修容疑者は)『ヘリコプターペアレント』だと言えるかもしれません」と、犯罪心理学者である東京未来大学の出口保行教授は指摘しています。

「ヘリコプターペアレント」とは、米国で生まれた言葉で、ヘリコプターが子供の周囲で静止しているように、子供を常に監視し、問題が生じればすぐに助ける親を指します。出口教授は、このような親の育児スタイルが非行や犯罪に与える影響について考察した「犯罪心理学者は見た危ない子育て」という本を出版しています。同書でも、ヘリコプターペアレントが子供に与える影響について触れています。

法務省職員として、全国各地の刑務所や少年鑑別所などで心理分析を行ってきた出口教授は、「どの心理分析を行っても、親の育児スタイルが(非行や犯罪に)関係していなかったということは一度もありませんでした」と指摘しています。この事件について、出口教授は「親は子供から依存され、頼られることで自分自身の生きがいを感じるし、その逆もあります。この事件の親子関係には、お互いが依存し合う状況が見られる」と分析しています。

子供の成長機会を奪う「過保護型」

親の育児スタイルが子供に及ぼす影響を調査する際には、心理学の分類手法である「サイモンズ式分類」という手法が長く使われています。

米国の心理学者であるサイモンズは、親の育児スタイルを「支配」(子供に命令や強制する態度)▶「服従」(子供の言いなりになる態度)▶「保護」(必要以上に保護する態度)▶「拒否」(子供を拒否する冷淡な態度)-という4つの方向性に分類しました。縦軸が「支配-服従」であり、横軸が「保護-拒否」の場合、過保護型(子供を支配し、保護する)、甘やかし型(子供の言いなりになる)、高圧型(子供を受け入れず、支配的にふるまう)、無関心型(親の生活中心で子供に無関心)-の4つの育児タイプに分類されます。

逮捕された修容疑者の育児スタイルは、現時点ではどの分類に当てはまるのでしょうか。出口教授は「親が娘の世話をする状況に焦点が当てられているため、過保護型の傾向が強いように見えますが、親が娘の言いなりになっているという可能性も考えられます。まだ完全には分からない部分もあります」と指摘しています。出口教授によれば、過保護型の育児を受けた子供は成長の機会を奪われ、依存的で弱い性格になる傾向があるとのことです。

出口教授は、「どこまでが妥当な範囲で、どこからが過度な範囲か、子供たちにそれを守らせることが重要です。その意味で、日常的に育児を見守ることも重要です」と話しています。

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