アルツァフ共和国に武器を捨て降伏するようアゼルバイジャンが要求

アゼルバイジャン国防省は19日、対テロ作戦を開始しました。彼らは「アルメニア軍事組織(ナゴルノ・カラバフ地域のアルメニア人武装勢力)が武器を捨てて降伏すれば、作戦を中止する」と呼びかけています。この要求は、アゼルバイジャンが主権と統治の受け入れを求めていることを示しているのです。

アルメニアは現時点ではアルツァフ共和国との武力衝突に介入していない

アゼルバイジャン国防省は19日、「三国間の声明の条項を確実に履行し、カラバフ経済地域での大規模な挑発行為を抑制し、アゼルバイジャン領からのアルメニア軍事組織の武装解除と撤退を実現するため、現地で対テロ作戦を開始した」と発表しました。アルメニアの軍事組織とは「アルツァフ共和国軍=ナゴルノ・カラバフ地域に存在するアルメニア人武装勢力」という意味です。アゼルバイジャン国防省は「カラバフ経済地域に駐留するアルメニア軍事組織が武器を捨て降伏すれば、作戦を中止する」と呼びかけています。

Azerbaijan army
出典:President.az/CC BY 4.0

アルメニアのパシニャン首相は、「アルツァフ共和国にアルメニア軍は存在しない」と主張しています。しかし、アゼルバイジャン側はアルツァフ共和国軍を「アルメニア軍の一部」と見なしているため、結局は「アルツァフ共和国の解体=アゼルバイジャンの主権を認めて統治の受け入れ」と解釈するのが適切だと考えられます。

アルツァフ共和国のルーベン・ヴァルダニャン元国務相は、「アルメニア指導部はアルツァフ共和国を認め、アルメニア人の保護する戦いに参加すべきだ」と訴えています。しかし、パシニャン首相は和平交渉のために「ナゴルノ・カラバフ民族という概念が存在せず、独立した」という主張は成立しないと公の場で何度も発言しています。そのため、現時点ではアルツァフ共和国とアゼルバイジャンの武力衝突に介入する様子はありません。

Armenia
出典:The Prime Minister of the Republic of Armenia

エルドアン大統領も「ナゴルノ・カラバフ地域をアゼルバイジャン領だと認識しており、今回の対テロ作戦も自国領を守るための戦いだ」と述べてアゼルバイジャン側の行動を支持しています。さらに、「アルメニアがザンゲズール回廊に関する約束を果たすのを待っている」とも述べており、2020年の停戦協定に盛り込まれた「ナヒチェヴァン自治共和国とアゼルバイジャン本領を繋ぐ交通手段の建設」に対して圧力をかけています。

もし「ザンゲズール回廊」がシュニク地域を通って建設されれば、トルコとアゼルバイジャンはナヒチェヴァン自治共和国を経由して陸路で結ばれることになります。そのため、パシニャン首相と会談したイランのライシ大統領は、「イランにとって同地域の如何なる変化も許容できない。アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージアの3国とロシア、トルコ、イランの3国での対話以外の協力や軍事演習は事態を複雑にするだけだ」と述べ、アルメニアの米国との軍事演習発表や安全保障政策の多様化に対して牽制を行っています。

Azerbaijan Patriotic War Victory Parade
出典:President.az/CC BY 4.0

南コーカサスの状況については、「ロシアとイランが協議を行っている」と報道されています。思惑や力関係がどのように表面化するかはまだ分かりません。

アルメニア国内でも、武力衝突に介入する気のないパシニャン首相に対する抗議活動が広がっています。一部の野党も首相を弾劾するために「あらゆる政治勢力の結集」を呼びかけています。そのため、ナゴルノ・カラバフ問題やアゼルバイジャンとの和平協定に対する不満が一気に爆発する可能性があります。

South Caucasus
出典:Google Map

以上は、これまでの情報と今回の情報をまとめたものに過ぎませんので、報道機関の記事と併せてご覧いただくことをおすすめします。

アゼルバイジャンは停戦協定の履行と武装解除を目指して対テロ作戦を開始しました。南コーカサスの緊張が高まっていますが、イラン大統領は何らかの変化を容認しないという姿勢を示しています。アルメニアとアゼルバイジャンが軍を国境地域に移動させるなど、状況は一触即発です。ウクライナ侵攻によってNATOが結束しており、CSTOはロシアの信頼を失いつつある状況です。アルメニア国内では数千人規模の抗議集会が行われ、ナゴルノ・カラバフを敵に売り渡すことに対する不満が広まっています。イランはアゼルバイジャンとの国境で大規模な軍事演習を行っており、焦点はザンゲズール回廊にあります。

参考文献:

日本ニュース24時間