韓国の鎮静化した処理水問題、野党代表のハンストはなぜ国内で響かず?

ハンストを行う野党代表

福島第一原発の処理水放出から1カ月が経過しました。韓国では、この放出に対する反応について、テレビ朝日ソウル支局の河村聡記者に話を聞いてみました。

放出前の報道と反応は?

放出の決定から実際の放出までの間、韓国では大々的に報道されていました。特に放出が近づいた春頃からの報道は、日本国内以上に盛り上がっていたと言えます。

大きく言えば、「IAEAの判断を尊重する与党が放出を容認する」という立場と、「不安を煽り、政権攻撃の材料にする野党」という立場が存在し、ソウルの街中では双方が横断幕を掲げ、大々的にアピールしていました。

双方の主張は?

野党は「核汚染水(処理水)の放出により、我々の海が汚染される」「海はゴミ捨て場ではない」といった日本批判を展開しました。さらに日本政府を容認する韓国政府や大統領に対しても、「どこの国の政府なのか」と攻撃を行いました。

一方で与党は、「ありもしない怪談や作り話で不安を煽っているのは野党だ」と反撃しました。

処理水放出時の動きは?

デモに参加した人々

処理水放出時には、韓国の各局が福島から中継を行う中で、以下のような騒動もありました。

  • 韓国の日本大使館前やソウル中心部でデモが相次ぎました。大学生たちは大使館に抗議し、一部が逮捕されました。
  • 環境団体による日本旅行や日本ビールの不買キャンペーンが行われました。
  • 最大野党「共に民主党」の李在明代表がハンストを開始しました。

しかし、これらの過激な動きはニュースになりやすかったものの、一般の韓国人に広がるまでには至りませんでした。大使館前では最初はデモが連日行われていましたが、2週間ほど経つと姿を見かけなくなりました。

韓国では過去に「ろうそく集会」などの抗議活動が広がったことがありますが、今回は大きな広がりにはならず、しぼんでいった印象です。

中国と韓国の「差」とは?

中国では日本の水産物の輸入停止やイタズラ電話など、多くの非難がありました。その一方で、韓国ではこうした動きはほとんどありませんでした。

その理由の一つは、韓国政府が「IAEAの判断を尊重する」と公表していたことです。放出前には日本に専門家チームを派遣し、科学的な検証を行い、さらには放出2カ月前から平日には毎日記者会見を行って処理水に関する情報提供を続けていました。また、フェイクニュースやデマに対する対応も積極的でした。中国とはここが決定的に異なる点です。

韓国の水産物の影響は?

中国では水産物の売り上げが減少していると報道されていますが、韓国ではそういった大きな変化は見られません。スーパーや海鮮系の外食業の統計を見ても、放出前後で大きな変動はありませんでした。風評対策による大規模なキャンペーンや支援の動きがあったこともあり、短期的な影響にすぎないと言えます。

野党のハンガーストライキの結果は?

最大野党「共に民主党」の李在明代表は、放出から1週間後に「処理水に対する尹政権の対応に抗議する」としてハンガーストライキを開始しました。しかし、18日目に体調悪化で入院し、その後もハンストを続けましたが、24日目の先週末にドクターストップがかかり終了しました。

この動きは大きなニュースとなりました。実は韓国では国会議員のハンストは珍しいことではありませんが、「最大野党の代表が国会会期中に」という点で非常に異例であり、報道も多くありました。

実際には韓国のハンストは一日中座り込みを行わないことが一般的です。夜は自宅に帰り、李代表の場合は公務もこなしていました。そのため、「本当に何も食べていないのか?」という疑問の声もありました。

しかし、ハンストの効果については、連日ニュースでは取り上げられていましたが、反応はあまり芳しくありませんでした。「何のためにやっているのか?」や「野党代表がやるべきではないことだ」といった冷ややかな声も上がっていたのです。

また、李代表は過去に土地開発を巡るスキャンダルなどで捜査対象となっており、ハンスト中に逮捕状の請求もありました。しかし、裁判所が逮捕状の請求を棄却したため、一旦は逮捕は回避されたようですが、そのような渦中でのハンストだったため、「逮捕を逃れるためだろう」という見方も少なくありませんでした。

(日本ニュース24時間)

ソースリンク:https://news.yahoo.co.jp/articles/926d7a4aade5fb04406b531c8537a1ef094afcfd

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