「子供留守番禁止」条例案に対する埼玉の首長らの怒りと困惑

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子供の安全を守るためとされる埼玉県虐待禁止条例の改正案が、埼玉県議会で可決される見通しです。この改正案では、小学校3年生以下の子供の放置を禁止する内容が盛り込まれており、自宅での留守番や子供だけで公園で遊ぶことも放置とみなされます。しかし、この改正案には市民から「生活実態とかけ離れている」といった反対の声が相次いでいます。一方で、虐待防止の観点から賛成の声も上がっています。

「放置」の定義が広範であいまい

この改正案に厳しい声を上げる竪十萌子弁護士は、子供の虐待や離婚問題に取り組んできた埼玉弁護士会所属の弁護士です。竪十萌子弁護士は、「極めて問題の多い改正案。『放置』の定義が過度に広範であいまいだ。子供の人格権も含め、憲法に抵触する恐れすらある」と指摘しています。

通園バスの車内での放置による事故が全国で相次いでいることを踏まえ、竪十萌子弁護士は、「著しく危険な放置を禁止するのは誰も反対しない」としながらも、「買い物や急な入院で子供を預けられる先はなかなかない。日常的な短時間の留守番や、近所の公園で子供だけで遊ぶことまで禁止することに説得力のある根拠はない」と述べています。

反対意見も多く

保護者や教育関係者からも、この改正案に対する反対の声が上がっています。川口市で幼児と小学生の男児を育てる自営業の男性は、「子供だけはダメ、というのは本当に理想的な社会なのか」と疑問を呈しています。同様に、4人の子供を育てながら教員として働く女性も、「子供だけで学校に行くことが放置になると、通学はどうすればいいのか。共働きの家庭では、保護者が付き添うのは厳しい」と戸惑っています。

教育現場でも、業務の負担軽減が課題とされており、「教員が下校を見守ることになれば、多忙に拍車がかかり無理だと思う。学校現場や当事者の声を聞いてほしい」との声が上がっています。

県内自治体の幹部も反対の声

この改正案に対して、埼玉県内の首長や市町村の幹部からも怒りや困惑の声が上がっています。幹部は「子供の預かりや放課後の児童対策は対象者が多く、関係者の意見聴取も行っていない中で、現実的な取り組みの方向性が見いだせない。市町村への対応を義務づけるなら、関連する要項、規則、財源が明示されないと現場が混乱する」と指摘しています。また、市幹部も「学童指導員の増加や外での見守りも必要となり、人員配置や財政負担も懸念される。この条例により守れない家庭も多いと思う」と困惑しています。

さまざまな意見が交錯する中、この改正案の取り下げを求める声も広がっています。どのような形で条例が運用されるか、これからの議論がますます重要になってきます。

※本記事の一部は、日本ニュース24時間の元記事を再編集したものです。

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