八冠独占の藤井聡太竜王・名人、奇跡の大逆転はなぜ起きた AIが示す勝率「99%」でも正解手を指し続けるのは断崖絶壁の細い道

藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖、21)の快挙、八冠独占の話題が日本中を騒がせました。彼はタイトル8つの独占を達成した史上4人目の棋士となりましたが、この快挙はなぜこんなにも注目されたのでしょうか。その理由は、劇的な大逆転の結末にあったのです。将棋ソフト(AI)が示した藤井竜王・名人の勝率はわずか1%でしたが、なぜ彼は逆転勝利を収めることができたのでしょうか。実際に指している棋士たちは、まさに断崖絶壁の細い道を歩むようなプレッシャーと戦っていたのです。

大逆転の瞬間

藤井聡太竜王・名人と永瀬拓矢前王座の戦いは、王座戦五番勝負の第4局で決着がつきました。終盤において永瀬九段が優勢な状況であり、5時間以上の持ち時間を使い切り、ついに1分将棋に突入しました。実況中継していたABEMAの将棋ソフト「SHOGI AI」は永瀬九段の勝率を99%、藤井竜王・名人の勝率を1%と予測していました。このまま進めば永瀬九段の勝利は間違いない、と思われた状況でした。

しかし、勝率99%と言っても、局面によって難易度は大きく変わります。例えば最善手を指した場合は勝率が維持されますが、次善手を指した場合は勝率が変わらないこともあります。つまり、同じ価値の手ということです。また、勝率は一気に下がることもあります。永瀬九段の手番である123手目、SHOGI AIが示した次善手を指した場合、勝率は33%も下がり、66%まで戻るとされていました。3番目の手であれば51%減少し、4番目と5番目はそれぞれ67%減少し、形勢逆転となることが明らかでした。

そして現実に永瀬九段が指したのは、勝率を示す5番目の手ではありませんでした。この手は実に勝率84%減少する悪手でした。一気に劣勢に転じ、永瀬九段は自身のミスに気づいて絶望しました。勝負事に「たられば」はありませんが、感想戦で最善手を挙げていたことから考えると、彼にとってはミスが許されない相手であり、1分将棋という時間制限もプレッシャーの一因でした。もしプレッシャーがなければ、永瀬九段はスムーズに指すことができたのでしょう。

勝率99%からの大逆転

「勝率99%」と聞くと、将棋に詳しくない人でも永瀬九段が必勝の状況から敗北してしまったと思われるかもしれません。実際、AIは最善手を指し続けることで、勝利を確実に導くと示していました。しかし、2番目や3番目の手を指す状況は、実際に指している棋士にとっては非常に困難なものです。自身の勝率が1つの正解に絞られている中で、その正解を見つける難しさは計り知れません。明確な詰み筋が見えない限り、勝利は確信できません。棋士たちは真っ暗闇や霧の中で自分自身を信じて指しているのです。

このように、藤井聡太竜王・名人の大逆転勝利には様々な要素が絡んでいます。AIの勝率予測はあくまで一つの指標に過ぎず、実際の指し手はプレッシャーや状況によって大きく変わることがあります。藤井聡太竜王・名人の偉業は、その困難な道を歩みながら、逆境を乗り越えて勝利に導いた結果と言えるでしょう。

記事のソースリンク: 日本ニュース24時間