ウクライナに提供されたATACMSは約20発、短射程タイプの提供が濃厚

ウクライナ軍がATACMSを使用していることが確認されましたが、ニューヨーク・タイムズ紙によると、「ATACMSが戦場にどれだけの違いをもたらすのかは不明です。これまで西側が提供した兵器類は小さな違いしかもたらしておらず、ATACMSの提供数は約20発です」と報じられています。

ロシアが航空支援や占領地域の補給に使用している主要基地のほとんどに手が届く

先月の米国の発表にはATACMSは含まれていませんでしたが、NBC、WSJ、ワシントン・ポスト紙によると、「バイデン大統領がゼレンスキー大統領に少数のATACMS提供を伝えた」と報じられており、BBCも「米国がウクライナにATACMSを提供する」と報じました。また、17日にATACMSによるベルジャンシク攻撃が確認されたため、「提供は事実だった」と確認されています。

PRESIDENT OF UKRAINE
出典:PRESIDENT OF UKRAINE

攻撃を受けた飛行場で「M74子弾の残骸」が確認されているため、提供されたATACMSは単一弾頭タイプのM57やM57E1ではなく、「M74子弾を内包するM39(子弾950発内包/射程165km)」か「M39A1(子弾300発内包/射程300km)」のどちらかであることが確定しています。

ニューヨーク・タイムズ紙はこの件について、「ATACMSが戦場にどれだけの違いをもたらすのかは不明です。これまで西側諸国が提供した戦車を含む兵器類は小さな違いしかもたらしておらず、ウクライナに提供されたATACMSのバージョンは射程距離が限られている。それでも関係者は『ロシアが航空支援や占領地域の補給に使用している主要基地のほとんどに手が届く』と述べています。」と報じており、提供されたATACMSは射程165kmのM39である可能性が高いです。

管理人作成(クリックで拡大可能)
出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

さらに、ニューヨーク・タイムズ紙は「ウクライナへのATACMS輸送はロシアの攻撃を避けるため秘密裏に行われ、西側当局者は『米国が提供したATACMSの数は約20発です』と明かした」と報じており、165km以内の目標を好きなだけ攻撃できるわけでもありません。この提供数はWSJの過去の報道とも一致しています。

先月のWSJの報道によると、「バイデン大統領は長距離攻撃兵器を提供する用意があり、関係者によれば少数のATACMSが数週間以内に、さらに多くのATACMSが長期的に供給される可能性がある」と報じられています。ATACMSの提供が20発で終わるとは思わないですが、ATACMSの提供に大きな期待を抱くのも控えた方が良さそうです。

Zelenskiy/Official
出典:Zelenskiy/Official

ATACMS M39の最大到達範囲は上記マップの黒い範囲(ロシア領内への使用は不可)で、これは最前線で発射した場合の話ですので、「実際の到達範囲」はこれよりも小さくなる可能性が高く、射程300km以上のストーム・シャドウも効果を上げていますが、「戦場に大きな違いをもたらしているか」と問われればNOです。

ATACMSはロシア軍の継戦能力に「追加の負担」をもたらすことは確実ですが、高価で数も少ないATACMSやストーム・シャドウだけで「ロシア軍の兵站」を決定的に破壊するのは不可能に近く、結局はアゾフ海沿いの陸橋を物理的に遮断し、何らかの方法でクリミア大橋を破壊しない限り、ウクライナ南部のロシア軍を引き下がらせることは困難でしょう。

CC BY 4.0/Rosavtodor.ru
出典:CC BY 4.0/Rosavtodor.ru

なお、ロシア軍は「航空機の運用方法」や「兵站ルート」を変更してくる可能性が高く、個人的には「これによってロシア軍の戦闘効率がどこまで低下するか」に注目しています。

ウクライナ軍のザルジニー総司令官はATACMSの発射シーンを動画で公開しており、バイデン大統領が少数のATACMS提供をゼレンスキー大統領に伝えた可能性もあります。

※アイキャッチ画像の出典:Photo by John Hamilton M270から発射されたATACMS

(Source link: 日本ニュース24時間)