これぞ“おもしろい将棋”の真骨頂!?藤井聡太竜王、安全な勝ち筋を辿らずスリル満点の最短距離を爆進した一手

藤井聡太竜王

百戦錬磨の解説棋士も、笑うしかなかった。将棋の藤井聡太竜王が、挑戦者の伊藤匠七段に対して行った第36期竜王戦七番勝負の2局目が、10月17日と18日の両日に京都市の「総本山 仁和寺」で行われ、藤井竜王が107手で勝利を飾った。

「え!?ちょっ…」解説者を驚かせた藤井竜王の一手

白熱の最終盤では、藤井竜王が最短距離で勝利に近づくスリル満点の一手を披露しました。この場面で解説陣からは「え!?ちょっ…」「正直ド肝を抜かれました」と声が上がりました。

前人未踏の「八冠独占」から一週間が経ちました。喜びも束の間、藤井竜王は早くも防衛戦に臨んでいました。対するは同じ2002年生まれの新鋭・伊藤七段。この局面では先手番の藤井竜王が、連勝を目指して得意の角換わりを志向しました。藤井竜王は「先後逆で端を突き合っている形で類型がある展開かなと思いますが、こちらが仕掛けてという将棋で、攻めが細いので微妙なところかなと思っていました」と話していましたが、伊藤七段にとっては「あまり想定していなかった」という展開でした。「攻め合いを妥協した」という挑戦者を突き放すように、藤井竜王のペースで進むこととなりました。

中盤以降、伊藤七段は長考を重ねて持ち時間を消費しました。「自信のある順が見つからなかった」と話すほど苦しい時間を過ごしていました。ABEMAの「SHOGI AI」は藤井竜王が優位であったにもかかわらず、終盤戦では大差ない状況になりました。しかし、藤井竜王は38分考えた後、「人間には指しにくい」とされた相手の陣地に金を打ち付けるという強力な一手を選びました。また、後手の出方次第で様々な対応が可能な指し回しを行い、リードを広げていきました。

初めてタイトル戦の舞台に立った伊藤七段も簡単には折れませんでした。最終盤では劣勢ながらも思い切った角捨ての勝負手を打ち、藤井竜王を揺さぶりました。さらには先手玉の上部脱出を阻止するために角を打ちましたが、藤井竜王は動じませんでした。藤井竜王は5分の考慮の後、角の利きがあるまま玉を引く選択をし、鈴木大介九段(49)の解説で「え!?ちょっ…」と驚かれました。鈴木大介九段は藤井竜王の着手直前に「(玉引きは)危険な発想」と指摘していましたが、「おっホホホホ!いち早く勝ちに行きましたね、スゴイな。正直ド肝を抜かれました。大丈夫なんですね!」と笑ってしまいました。

藤井竜王は最速かつ最短で勝利を目指しましたが、ABEMAの「SHOGI AI」の評価は83%から57%まで急降下しました。盤面は後手の駒の利きが張り巡らされているように見える配置になりました。しかし、藤井竜王は最短距離の見立て通りに銀を打ち、伊藤七段が投了するまで指し続けました。このスリリングな終盤戦により、藤井竜王は勝利を鮮やかに勝ち切りました。

八冠達成後、藤井竜王が次なる目標としたのは勝数や戴冠数ではなく、「おもしろい将棋を指すこと」です。彼は将棋の面白さについても触れ、「将棋は取った駒を持ち駒として使えることがひとつの大きな特徴で、それによって中盤や終盤の局面が複雑になっていくのが面白いと思っています。私も将棋を指しながら、そういった局面に出会えたらいいなと思っています」とコメントしています。

偉業達成から初の防衛戦に臨んだ藤井竜王は、この試合でその「おもしろい将棋」を表現しました。観戦者たちは多少スリリングな展開と感じるかもしれませんが、藤井竜王は危険を顧みずに勝利への最短距離を爆進しました。「おもしろーい」「神の遊びか…」「これが面白い将棋か」「どうしてこうなるの?」「ひええ最速こわ」と大いに興奮しました。この一局は、藤井将棋の真骨頂とも言えるものでした。

「同学年対決」は藤井竜王が2連勝し、防衛に向けて前進しましたが、まだまだ試合は続きます。10月25日と26日に福岡県北九州市の「旧安川邸」で行われる第3局では、どのような激戦が繰り広げられるのでしょうか。今後の対局もますます目が離せません。

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