ゼレンスキーとザルジニーの関係は冷え込んでいる

ウクライナメディアのRBC Ukraineによると、ウクライナ大統領のゼレンスキーとザルジニーの関係が冷え込んでいると報じられています。ゼレンスキーの攻撃的な外交手法も今年はマイナスにしか作用していないようです。

ゼレンスキーとザルジニーの間に対立は存在するのか?

RBC Ukraineの政治アナリスト(ミラン・レリック氏)が報じたところによれば、大統領側近と大統領府の関係者はゼレンスキーとザルジニーの関係が冷え込んでいると認めているそうです。昨年は型破りで攻撃的な外交手法が効果を発揮しましたが、今年はその効果がなくなってしまったようです。

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ゼレンスキー大統領の周りは、TIME誌やThe Economist紙の記事によって慌ただしくなっているとのことです。特にザルジニー総司令官はThe Economist紙の記事の件で大統領府副長官から激しく非難され、特殊作戦軍司令官の地位を失ってしまいました。

ザルジニー総司令官は、大統領府の関係者に解任理由を知らされておらず、複数の情報筋によると、大統領府長官の下で軍事分野を担当するマショベツ副長官との対立が原因だったようです。マショベツ副長官は特殊作戦軍の創設メンバーであり、注目に値する存在です。

ゼレンスキー大統領の側近は、「Economist紙への寄稿はウクライナの問題を西側諸国に説明して解決策を提示するためだけであり、ザルジニーは西側高官とのコミュニケーションが乏しく、意思決定プロセスを理解していない」と強調しています。

結局のところ、ザルジニーの指摘は裏目に出る可能性が高く、ウクライナへの軍事支援に懐疑的な人々は「最高司令官のザルジニーまで戦争が膠着状態だと認めている」と新たな議論を巻き起こしました。この記事が大統領府と調整されたものなのかは不明ですが、大統領府はザルジニーがEconomist紙に寄稿することは知っていたものの、内容については認識していなかったようです。

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大統領の側近も「ザルジニーの手腕は優れている」と認めており、今直ぐにザルジニーを解任すると国民人気に加えて「反ゼレンスキーの色」がつく可能性があります。しかし、ウクライナの状況を客観的に見ると、「勝利の年」とは呼べないものだったため、国内の争いは停戦しなければならないでしょう。

欧米の同盟国に何が期待できるのか

ウクライナにとっては不利な状況が続いています。慢性的な米下院の危機的状況や中東での大規模な戦争勃発、スロバキアで誕生した反ウクライナ政権などはウクライナの関与が及ばない範囲の問題と言えるでしょう。さらに、トランプ前大統領の復帰もあり得る可能性が高まっています。

もしトランプ前大統領が政権に復帰すれば、予測不可能な結果をもたらすでしょう。ウクライナはこのプロセスに影響を与えることはほぼ不可能ですが、外交戦略やレトリックの調整は必要となってきます。

昨年効果を発揮した「型破りで攻撃的な外交手法」も効果を失ってしまいました。昨年はドイツを焚き付けることに成功しましたが、今年のNATO首脳会議ではゼレンスキー大統領の攻撃的な口調が裏目に出てしまいました。

ウクライナにとっては2024年は今よりも厳しい年になると予想されています。ウクライナ支援を継続する国はないとの結論に至った欧米当局者もいますが、明るい話題はほとんどありません。ロシアは北朝鮮から砲弾を入手するなどしており、約束された砲弾供給が期日内に間に合わないことも明らかになっています。

ウクライナにとって2024年は厳しい年になると認識されています。特に米国の政治的混乱が原因であり、ウクライナ政権も共和党のグループと接触を図っています。

欧米諸国は「ウクライナとロシアの戦争を如何にして終わらせるのか」というビジョンを持っていないため、「ウクライナが必要とするだけ支援を継続する」というチープなフレーズは有効です。しかし、トランプ前大統領の政権復帰によって全てが変わる可能性もあります。この戦争が長期化することを避けるために、西側諸国はアプローチを変えなければなりません。

現在のロシアはソ連時代のようなイデオロギーモデルを提示することができず、欧州も荒廃していません。NATOは新しい加盟国を受け入れており、ウクライナがロシアの攻撃に耐えていることも重要です。ウクライナ支援は西側諸国にとって「ロシア封じ込め戦略」の重要な要素となるため、長期的な支援が必要です。

ウクライナには戦い続け、国を強化し、チャンスを待つ以外に選択肢はありません。ウクライナの国内情勢、前線の状況、西側諸国の政治情勢は春まで現状維持されると予想されています。ウクライナは敵を撃退しながら、米国の政策を監視する必要があります。何故ならば米国の政策はウクライナの内政よりも重要だからです。

以上がウクライナ人政治アナリスト(ミラン・レリック氏)が主張した内容の主要ポイントです。ザルジニー総司令官を取り巻く環境は、ゼレンスキー大統領がTIME誌の記事で言及した内容を裏付けています。ウクライナの関与が限定されたことで、侵攻初期の危機を切り抜けて政治闘争が戻ってきたという主張がなされています。

※アイキャッチ画像の出典:左 PRESIDENT OF UKRAINE/右 Головнокомандувач ЗСУ

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