厚生労働省の政務三役という要職にありながら自らの所掌分野で不適切な行為に手を染める。言語道断の所業である。
政務官を辞任した自民党の上野宏史衆院議員のことだ。外国人労働者の在留資格取得で口利き疑惑が浮上した。辞任は事実上の更迭だろう。
報酬を得ることを目的とした国会議員による公務員への口利きは、あっせん利得罪に問われかねない行為である。
ましてや上野氏は、外国人労働者の在留資格のあり方を研究する同省検討チームのトップを務めていた。この問題に対する不信を高めた責任も極めて重い。
やましいところがないというのなら、まずは国民の前に出てきて記者会見し、公人として当然の説明責任を果たすべきである。
発端は週刊文春の報道だ。上野氏は、在留資格をめぐって口利きを行う見返りに、外国人の派遣企業に金銭を求めていたとの疑惑が報じられた。上野氏は辞任後のコメントで「法令に反する口利きをした事実はない」と釈明した。
法令に反しない口利きとは何かを聞いてみたい。捜査当局が事実関係を調べるのは当然である。
上野氏は辞任理由について「誤解を招きかねないとの指摘があり、体調を崩し、役所に出ることがままならない」としている。
有権者を愚弄している。この既視感は何なのか。明確な説明もなく、言い訳だけして体調不良を理由に雲隠れするのでは、ただの逃げ口上にしかみえない。国会議員の進退は自らが決めることだとしても、この一点だけで議員の資質に疑問符がつく。野党には国会で厳しく追及してもらいたい。
今年4月、外国人労働者の受け入れ拡大を図る改正入管法が施行され、新たな在留資格が設けられた。法務省の入国管理局も出入国在留管理庁へと格上げされた。
その前から、外国人技能実習生への低賃金や違法残業、賃金未払い、暴行が発覚していた。悪質ブローカーによる人身売買まがいの所在不明事件も多い。この是正が上野氏の役割だったはずだ。自ら悪質ブローカーまがいのことをして国民が納得すると思うのか。
安倍晋三首相の任命責任は大きい。首相は9月に内閣改造と自民党役員人事を行うが、議員の資質をしっかりと見極めるべきだ。もはや政権内の不祥事は許されぬと厳しく認識すべきである。