血の通わない中国の対応 深圳男児刺殺、日本は国際問題化を 神田外語大・興梠一郎教授


【写真】日本人学校の男子児童が男に襲われた現場

深圳市の男児刺殺事件が起きた直後、中国外務省の報道官は「どこの国でも起こり得る」と発言した。全く人の血が通っていない発言で、普通の感覚ではない。「自分たちのせいではない」と責任回避しているように映る。意に沿わない人物は切り捨てられる習近平政権下で懲罰を恐れ、保身に走る者ばかりになった中国政府が硬直化している表れでもある。

■真剣に対応する姿勢見えず

中国側からは1カ月たっても納得のいく説明は皆無だ。日本も引き続き説明を求めるべきだが正直、何も期待できないだろう。6、9月のわずか3カ月間で2回も日本人学校を狙った事件が起きて、いずれも死者が出た深刻な事態だが、中国政府は「偶発的な個別事案だ」との一点張りで、まるで知らん顔だ。

交流サイト(SNS)で「日本人学校はスパイ養成機関」などのデマは放置し、北京大教授による「事件は(中国の)憎しみを生む教育のせいだ」との理性的な投稿は削除する。自らに都合の良い「中国は安全だ」といった明るい情報しか出せないのだろうが、真剣に対応しようという姿勢がまるで見えない。

■動機は「生活苦」か「反日」か

容疑者の動機は「生活苦」か「反日」のどちらか、または両方とも要因だったと推測できる。中国は空前の不景気で仕事がない。今年に入り、失業した中年の男が相次いで刺傷事件を起こしている。経済低迷で中国社会の治安が悪化していることと無関係ではない。

反日の影響も捨てきれない。昨年の原発処理水放出以降、日本人学校に卵が投げつけられるなど嫌がらせはすでに起きていた。今年は2件の刺殺事件の前、江蘇省蘇州市で日本人が首を切りつけられる事件もあった。「日本嫌い」が大きな事件を引き起こす〝予兆〟はいくつも出ていた。

中国政府は「反日教育はない」と否定しているが、江沢民時代から反日的な愛国主義教育が強化され、南京大虐殺記念館などの歴史教育施設が作られてきた。容疑者も影響を受けた世代だ。中国は憎しみを生む教育を進めた反省をすべきだ。



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