近年、円安の影響による物価上昇が深刻化していますが、高収入の象徴とも言える大手商社勤務のエリート社員でさえ、東京23区での子育てに苦悩しているという現実があります。今回は、都内マンション価格の高騰と教育費負担の増加という二重苦に直面する、エリート会社員の厳しい家計の実態について詳しく解説していきます。
大手商社勤務でも余裕なし?エリートを苦しめる住宅ローンと教育費の壁
「勝ち組」のイメージが強い大手商社勤務のエリート社員ですが、実はその多くが住宅ローンと教育費の負担に頭を悩ませています。
私の友人も、大手商社で管理職を務めるエリート会社員の一人です。10年ほど前に約7,500万円で購入した中古マンションに住み、二人の子供を私立中学受験に挑ませるという、いわゆる教育熱心な家庭です。
しかし、近年の急激な物価高騰の影響で、生活は決して楽観できる状況ではありません。彼は、「子どもの塾代を捻出するのが年々厳しくなり、妻にもアルバイトに出てもらっている」と、苦笑いしながら現状を語ってくれました。
実際、年収1,000万円を超える世帯では、税金や社会保険料の負担が大きくなります。例えば、年収1,300万円(配偶者と15歳以下の子供2人を扶養)の場合、手取り額は約910万円。所得税と社会保険料で約150万円、住民税で約90万円が差し引かれ、手取り額は年収の約70%にまで減少してしまうのです。
東京のマンション価格
1998年以降、日本経済は低迷し、東京23区での子育ては経済的に厳しいと言われてきました。しかし、近年では、高収入と言われるエリート層でさえ、余裕のある生活を送ることが難しくなっているのが現状です。
ましてや、平均年収以下の家庭では、教育費にお金をかけたくてもかけられないという状況が深刻化しており、教育格差の拡大に拍車をかけていると言わざるを得ません。
東京23区のマンション価格、20年で2倍以上に高騰!その背景にあるものとは?
では、なぜ東京23区での子育ては、ここまで経済的に厳しい状況になってしまったのでしょうか?
その大きな要因の一つとして挙げられるのが、東京23区における新築マンション価格の高騰です。不動産経済研究所のデータによると、2023年の東京23区の新築マンションの平均価格は、なんと1億1,483万円と、初めて1億円を突破しました。
2001年の平均価格が4,723万円だったことを考えると、わずか22年間で価格は2.43倍(143%上昇)にまで高騰したことになります。
東京のマンション価格推移
注目すべきは、この価格高騰の大部分が、日銀による大規模な金融緩和政策以降に起こっているという点です。
大規模緩和が始まる前の2012年の平均価格は5,283万円でしたが、それ以降の11年間で2.17倍(117%上昇)と、価格上昇率がさらに加速しています。
この傾向は、全国や首都圏(1都3県)のマンション価格にも共通していますが、東京23区の上昇率が突出して高いことは明らかです。
マンション価格高騰の背景には、日銀の金融緩和政策に伴う「低金利」と「円安」の影響が大きいとされています。
円安によって建築資材価格が高騰し、その分がマンション価格に上乗せされました。また、低金利政策によって不動産市場に投資資金が過剰に流れ込み、マンション用地やマンション自体の価格が押し上げられる結果となりました。
人手不足による人件費の高騰もマンション価格上昇の一因として挙げられますが、その影響は限定的です。やはり、金融緩和政策の副作用が、マンション価格の高騰に大きく影響していると言えるでしょう。
まとめ
今回は、東京23区における子育ての経済的な厳しさについて、エリート会社員の事例を交えながら解説しました。
高収入層でさえ、住宅ローンや教育費の負担に苦しむ現状は、日本の将来にとって大きな課題と言えるでしょう。
政府は、住宅政策や教育費負担の軽減など、効果的な対策を早急に講じる必要があります。