日本一の高齢化率、群馬県南牧村の現状と課題

秋風が心地よい10月、東京から車で数時間かけて群馬県南西部に位置する南牧村を訪れました。山間部に囲まれたのどかな風景が広がる一方で、村は深刻な高齢化と人口減少という課題に直面しています。

かつてのこんにゃくの村、高齢化の波に

かつてこんにゃく芋の生産で栄えた南牧村。しかし、時代の流れとともに人口は減少し続け、2024年現在では1440人まで減少。高齢化率は7割弱に達し、日本で最も高齢化が進んでいる村と言われています。

村の中心部には、2018年に開設された特別養護老人ホーム「かのか」があります。ここでは、村から委託を受けたNPO法人「MINNAなんもく」が、21床の高齢者の生活を支えています。

群馬県南牧村にある特別養護老人ホーム「かのか」(写真:東洋経済オンライン編集部)群馬県南牧村にある特別養護老人ホーム「かのか」(写真:東洋経済オンライン編集部)

若者の流出、村に残る選択肢の少なさ

施設長の市川淳さん(38)は、高校卒業後に上京し、家族の介護のために2019年にUターンしてきました。市川さんの小中学校時代の同級生の多くも、村を出て都市部で生活していると言います。

「都会への憧れはもちろん、村にはやりたいことの選択肢が少なかった」と市川さんは当時を振り返ります。若者にとって、雇用機会や生活の利便性など、村に残るための魅力が乏しいことが課題となっています。

消滅可能性都市ワースト1位、希望の光は

南牧村は、2014年に民間団体「日本創成会議」が発表した「消滅可能性都市」でワースト1位となり、その後も最下位が続いています。

しかし、村では高齢者を支える施設の充実だけでなく、地域活性化に向けた取り組みも積極的に行われています。例えば、特産品のこんにゃくを使った新しい商品開発や、観光客誘致のためのイベント開催など、村の魅力を発信する努力が続けられています。

南牧村の人口ピラミッド(出典:東洋経済オンライン「消滅可能性都市」最新ランキング)南牧村の人口ピラミッド(出典:東洋経済オンライン「消滅可能性都市」最新ランキング)

村の未来は、住民の希望にかかっている

高齢化と人口減少という課題を抱えながらも、南牧村は住民の努力によって未来を切り開こうとしています。豊かな自然と温かい人情溢れるこの村が、これからも住み続けたいと思える場所であり続けるために、行政、企業、住民が一丸となって課題解決に取り組むことが重要です。