2027年、家庭用エアコンの「省エネ基準」が大幅強化へ:低価格モデルが市場から消える影響と消費者への影響

2027年度から、日本の家庭用エアコンに関する省エネ基準が大幅に引き上げられることが発表されました。この見直しにより、現在市場に流通している5万円前後の低価格帯エアコンの多くが新基準を満たせなくなり、販売が終了する可能性が高まっています。エアコンはもはや生活必需品であり、その価格と性能のバランスは多くの消費者にとって重要な選択基準です。しかし今後、手頃な価格帯の選択肢が狭まるかもしれません。本記事では、この省エネ基準見直しの背景、新たな基準の内容、なぜ「安いエアコン」が市場から姿を消すのか、そして消費者や業界への具体的な影響について、詳しく解説します。

家庭用エアコン「省エネ基準」大幅引き上げの背景

経済産業省は、2027年度を目標に、家庭用エアコンの省エネ基準を大幅に見直す方針を打ち出しています。これは、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」に基づき推進されるものです。家庭におけるエネルギー消費量の約3割を冷暖房が占めている現状を鑑み、その効率改善を通じて国全体の省エネルギー化を図ることを目的としています。

この見直しでは、「トップランナー方式」という手法が採用されます。これは、現時点で市場に出回っている製品の中で最も優れた省エネ性能を持つものを基準とし、将来的な目標基準値として設定する仕組みです。具体的には、エアコンの年間消費電力量を示す「通年エネルギー消費効率(APF)」の基準値が引き上げられます。例えば、一般的な14畳程度の部屋に対応する冷房能力4.0キロワットクラスの機種では、現行基準と比較して最大で34.7%もの性能向上が求められることになります。

2027年の省エネ基準改定により販売終了となる可能性のある低価格帯エアコン2027年の省エネ基準改定により販売終了となる可能性のある低価格帯エアコン

なぜ「安いエアコン」は市場から姿を消すのか?

家庭用エアコンには通年エネルギー消費効率(APF)などに基づく省エネ基準が定められていますが、現行制度下では、その基準を達成しているかどうかにかかわらず、全てのエアコンが販売されています。そのため、消費者は価格帯や性能の異なる多種多様なモデルの中から製品を選ぶことが可能でした。

しかし、2027年度を目標とする新しい省エネ基準は、従来のハイエンド機種に匹敵するような大幅な性能向上を要求しています。このため、これまでの低価格帯モデルでは新たな基準をクリアすることが極めて困難となり、事実上、低価格帯機器の生産が不可能になると見られています。

もし製造事業者がこの新基準を達成できなかった場合、政府は勧告、さらには企業名の公表、そして最終的には命令や100万円以下の罰金といった罰則を科す可能性があります。このような法的措置のリスクを考慮すると、省エネ基準を満たさない製品を継続して販売することは実質的に困難になると考えられます。業界内では、この基準強化により、現在市場に出回っているエアコンモデルのおよそ7割が生産終了または抜本的なリニューアルの対象となるだろうという予測がなされています。

今後のエアコン選びと消費者への影響

2027年度からの新省エネ基準導入は、エアコン市場に大きな変革をもたらします。特に低価格帯の製品が減少することで、消費者はこれまでのような手頃な価格での選択肢が少なくなり、エアコンの購入価格自体が全体的に上昇する可能性があります。しかし、これは同時に、市場に出回る製品全体の省エネ性能が向上することを意味します。初期投資は高くなるかもしれませんが、長期的に見れば電気代の節約に繋がり、環境負荷の低減にも貢献するでしょう。

消費者は、買い替えを検討する際に、単に価格だけでなく、新しいAPF基準をクリアした製品の性能と長期的なランニングコストをより重視する必要が出てきます。この情報が、今後のエアコン選びの参考になれば幸いです。


参考文献:

  • 経済産業省 (METI) 公表情報
  • エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)
  • Yahoo!ニュース: 2027年に「安いエアコン」が市場から消える!? (元記事)