漫画家・五藤加純さん、双子の弟・中森愛さんへの思いを語る。「気が合う、気の置けない存在でした」

双子の弟であり漫画家仲間の死から1年

漫画家・五藤加純さんの双子の弟であり、同じく漫画家として活躍した中森愛さんが、2023年11月に心筋梗塞のため67歳で急逝してから1年が経とうとしています。

「お別れ会」は漫画家仲間が集う展示会

2024年8月には、東京・池袋で中森さんの「お別れ会」が開催されました。会場には、中森さんの生原稿や単行本のカバー、パネルなどが展示。学生時代の同人誌や、漫画を描き始めるきっかけとなった吾妻ひでお作品が掲載された雑誌の切り抜き、愛用していた定規やヘルメット、Tシャツなどの遺品も並びました。

五藤さんは「お別れ会というか、展示会でしたね。展示品は中森愛の活躍した1980~90年代が中心です」と振り返ります。

中森愛さんと漫画の世界

五藤さんと中森さんは、中学2年生の時から一緒に漫画創作を開始。ふたりとも吾妻ひでお作品から大きな影響を受けました。五藤さんが「別冊マーガレット」「花とゆめ」などに投稿していた学生時代を経て、会社勤めをしていた頃、当時「漫画大快楽」の編集者だった中森さんから依頼を受け、作品を描き上げました。そして1982年2月、同誌増刊号に掲載された「ああ快感!」でデビュー。その後、中森さんも漫画家としてデビューを果たします。

漫画家・五藤加純さん、双子の弟・中森愛さんへの思いを語る。「気が合う、気の置けない存在でした」

自由奔放だった弟との創作活動

生前の弟について五藤さんは「顔も性格もよく似ていると言われましたが、僕から見たら自由奔放な弟でした。漫画も僕は真面目な方に走るのですが、弟は絵柄も内容も自由でした」と語ります。

18人もの親族が参加する同人活動

五藤家では、五藤さんと中森さんを含め、18人もの親族が同人活動に関わっています。2002年8月には、親族一同で制作した同人誌「一族本」を創刊。五藤さんは「『一族本』は作りたいという人が“この指止まれ”と呼びかけて始まるので、次はマイナス1で続けると思います。仲の悪い親戚関係も多いと言われる中、うちの一族は面白いなと思っています」と笑顔を見せます。

中森愛さんの遺志を継いで

現在は年金とアルバイトで生計を立てながら、中森さんの遺作を電子書籍サイト「マンガ図書館Z」で配信すべく、データ作りに励んでいるという五藤さん。「悠々自適とはいきませんが、ま、中森さんの分も長生きしようかな」と前向きに語ります。

「気が合う、気の置けない存在でした」

中森さんの死去から1年、五藤さんは「まだ実感はわいていません。ある日突然目の前に現れても違和感がないような」と心境を明かします。

改めて中森さんの存在を問われると「今も昔も、ただ同い年の兄弟です」と前置きした上で、「まあ、いなくなって思うのは、気が合うというか気の置けない存在でした。例えばSNSに書けないような、つまんないことや過激なことを思いついても、もう伝える相手がいない」と寂しさをにじませました。

双子の弟との“並走”は続く

五藤さんは、12月末のコミックマーケットには、中森さんの子息のサークルに登場予定。来年2月のコミティアには、自らのサークル参加を目指し、「この時までには『二人でロリコメ…』の新刊を出したい」と意気込んでいます。

双子の弟との“並走”は、これからも続いていくようです。