深セン日本人学校事件から考える:中国の愛国教育とは何か?

深圳の日本人学校近くで起きた痛ましい事件から1ヶ月以上が経ちました。この事件や、蘇州での日本人母子襲撃事件などを受け、中国の愛国教育と反日感情の関係が改めて問われています。

愛国教育とは何か?その歴史と目的

中国では今年1月、「愛国主義教育法」が施行されました。これは従来から行われてきた愛国教育を法制化したものですが、その背景には、インターネットや文化施設を通じた愛国宣伝を強化し、中国共産党の支配体制をより強固にする狙いがあるとされています。

愛国教育の起源は1949年の建国後に遡りますが、特に強化されたのは1990年代、江沢民国家主席の時代です。1989年の天安門事件で混乱した社会をまとめ、国民の求心力を高めるために、愛国教育が積極的に推進されるようになりました。

1994年には「愛国主義教育実施綱要」が策定され、全国各地の戦争関連施設や中国共産党関連施設などが「愛国主義教育基地」に指定されました。現在、こうした施設は100カ所以上に及ぶとされています。

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深圳日本人学校が入居するビル(2024年9月撮影)

愛国教育の内容と、家庭・学校での取り組み

愛国教育では、小学校から高校までの教科書に愛国的な内容が盛り込まれ、子供たちは幼い頃から「偉大な祖国」「中華民族」「中国共産党」への強い愛着を植え付けられるように教育されます。

家庭でも保護者が子供に愛国心を教え込むことが求められており、学校教育と家庭教育の両面から愛国心が涵養されるシステムとなっています。

愛国教育と反日感情:複雑に絡み合う問題

日本政府は、深圳の事件などを受け、中国側に原因究明と再発防止を求めています。しかし、中国政府は「中国には反日教育は存在しない」と主張しており、事件と愛国教育の関連性を否定しています。

愛国教育と反日感情の関係は複雑であり、一概に断言することはできません。しかし、愛国心を強調するあまり、他国への敵対心を煽ってしまう可能性も否定できません。

今後の日中関係に向けて

今回の事件は、中国の愛国教育が持つ光と影を改めて浮き彫りにしました。今後、日中両国が真実に目を向け、未来志向の関係を築いていくためには、愛国教育のあり方についても冷静な議論を重ねていく必要があるのではないでしょうか。