「取り調べ」はできても「摘発」はできない!? いまだ未摘発の『地面師詐欺事件』の犯人たちが使った「カラクリ」


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そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。

同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。

『地面師』連載第32回

『土地の所有権を移転させるだけで「1億円」の借金をチャラに?複雑怪奇な『地面師詐欺事件』の発端となった「不可解な取引」』より続く

次々に移る所有権

そして、ここから土地の所有が、猛スピードで移っていく。A社の所有権が抹消された日と同じ6月9日には、2つの不動産会社が所有者として登場する。順番からいえば、A社から神奈川県相模原市の不動産会社B社がこの物件を買い取り、さらに東京都千代田区のC社に転売した形だ。1日でAからB、BからCと土地の所有者が変わっているのである。

なぜこんなことになっているのか。不動産業界の取材をするうち、運よくB社の社長をよく知るマンションデベロッパー経営者に出会うことができた。

「実は、うちもこの取引に乗らないか、と誘われたんです。社名貸しのようなものでいくらかになるというのですが、情報を集めるとどうも変なので断りました」

そう打ち明けてくれた。つまり、くだんのデベロッパーはB社とC社のあいだに一枚噛んではどうか、と誘われたという。むろん転売差益をエサに取引に組み入れようとしているのだが、地面師事件では、登場する業者が多いほど、それぞれの事件の関与が見えづらくなる。

転売をくり返す業者が増えれば、その分分け前が減ることにもなるが、ある不動産ブローカーはこうも言った。

「地面師事件には、たいていいくつも業者が噛んでいますが、その多くは曰く付きのところです。たとえばC社は築地にある銀座中央ビルの地上げで有名になりました。そこではC社がもとの所有者である台湾華僑に5億円の支払いをしているかどうか、という裁判になったり、地面師事件でしばしば取り沙汰される悪名高い弁護士がビルを占有したり、とかなり揉めた。トラブルの多い地上げ業者として知られています」



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