千代田区の異例「マンション転売規制」要請に不動産協会が困惑表明:その法的根拠と実効性に疑問符

東京都千代田区が不動産協会に対し行った異例の要請が、業界内外で波紋を広げています。その内容は、投機目的のマンション取引を抑制し、過度な住宅価格高騰を防ぐために、「原則5年間の物件転売禁止」を含む規制を求めるというもの。しかし、要請を受けた不動産協会側は、事前の説明がない「寝耳に水」の状態であったと困惑を隠していません。今回の要請の背景と、不動産協会が指摘する問題点について深く掘り下げます。

東京都千代田区の街並みと高級マンション群の遠景東京都千代田区の街並みと高級マンション群の遠景

不動産協会の「寝耳に水」:事前説明なき要請の背景

今回の千代田区からの要請について、不動産協会は「事前に当協会に対して何の説明もありませんでした。突然のプレスリリースに驚き、千代田区に求めて説明を受けたのが7月24日のことでした」と明かしています。要請発表から6日後にようやく説明を受けたものの、その場では十分な説明は得られなかったといいます。協会は現在、千代田区に対し書面で確認事項を提示し、その回答を待っている状況です。この一方的な要請の進め方は、不動産業界に大きな戸惑いを与えています。

要請の「法的性質」と「行政目的」の曖昧さ

不動産協会が最も疑問視している点の一つが、この要請の「位置付け」です。協会担当者によれば、「行政機関である千代田区からの要請がどのような法的性格を持っているのかが判然としません」とのこと。行政手続法に定められる「行政指導」であれば、その根拠となる「一定の行政目的」が明確である必要がありますが、今回の要請ではその「行政目的」が曖昧であると指摘されています。要請が法的強制力を持つのか、あるいは単なる協力要請に過ぎないのかが不明瞭なため、不動産事業者は具体的な対応策を講じにくい状況にあります。

転売制限の「実効性」への深い懸念

さらに、今回の要請に含まれる「原則5年間の物件転売禁止」という転売制限についても、不動産協会は実効性の面で大きな懸念を示しています。要請では、不動産業者と購入者間の契約においてこの制限を措置するよう求めていますが、「実際にどうやって実効性を持たせるのかという問題があります」と協会担当者は語ります。法律や条例に基づく規制であれば、刑事罰や行政罰によって強制力を持たせることが可能ですが、契約上の義務違反は訴訟などの民事手続きに頼らざるを得ず、十分な強制力に欠けます。また、購入者の「居住の実態」を調べるための立入権限もないため、事実確認が極めて困難であるとの見通しが示されています。

これらの背景から、不動産協会の吉田理事長が報道機関に対し「合理的でない」と強くコメントしたことが報じられており、今回の千代田区の異例の要請に対する業界の深い困惑と懸念が浮き彫りとなっています。住宅価格の安定化は喫緊の課題ですが、その実現には、法的根拠と実効性を伴った、より明確で合意形成されたアプローチが求められるでしょう。

Source: https://news.yahoo.co.jp/articles/31389fbdec8dae1a34e5db526da8de87d0b9524d