ベイルート空爆下でも演奏続ける日本人チューバ奏者 その決意と覚悟とは

レバノン情勢が緊迫する中、首都ベイルートではイスラエル軍による空爆が続いています。多くの住民が恐怖に怯える中、退避を選ばず、現地のオーケストラで演奏活動を続ける日本人男性がいます。彼は一体なぜ、危険と隣り合わせの場所で演奏を続ける決意をしたのでしょうか。

音楽への情熱と生活の現実

レバノン国立フィルハーモニー管弦楽団に所属するチューバ奏者の岡島征輝さん(43)は、今年9月からベイルートでの生活をスタートさせました。ドイツの音楽大学院卒業後、17年間エジプトのカイロ交響楽団で活躍、満を持してのレバノンでの活動開始でした。しかし、その矢先にイスラエルとハマスによる武力衝突が勃発、レバノンも戦闘に巻き込まれる事態となってしまいました。

日本政府は在留邦人に対し、自衛隊機による退避を呼びかけましたが、岡島さんはこの呼びかけに応じませんでした。その理由について、彼は「今の仕事があるからです。辞めてしまったら生活基盤がなくなってしまう」と語ります。

ベイルート空爆下でも演奏続ける日本人チューバ奏者 その決意と覚悟とは

岡島さんの言葉からは、音楽に対する情熱と、生活の現実に対する冷静な判断がうかがえます。

「困っていることはない」 演奏を続ける強い意志

岡島さんは、ベイルートの現状について「空爆の音は普段は聞こえません。一度だけ、自宅から2キロほどの場所に爆弾が落ちたことがありましたが、大きな音はしたものの、被害は特にありませんでした」と語っています。

ベイルート空爆下でも演奏続ける日本人チューバ奏者 その決意と覚悟とは

また、自衛隊機による退避を選ばなかった理由として、楽器の輸送問題も挙げられています。「自衛隊機に持ち込める荷物は20キロまでですが、チューバは1本あたり約30キロにもなるため、運ぶことができない」と岡島さん。演奏家にとって、楽器はまさに命綱。それを置いて退避することは、彼にとって現実的な選択肢ではなかったのでしょう。

岡島さんの力強い言葉からは、危険な状況下でも演奏活動を続けたいという強い意志が感じられます。

音楽の力で平和を願って

岡島さんのように、厳しい状況下でも前向きに生きる人々の姿は、私たちに勇気を与えてくれます。彼の奏でるチューバの音色が、一日も早く平和な世界を取り戻すための力となることを願ってやみません。