日本の民主主義を脅かす「認知戦」:SNSで拡散するロシアの情報工作の実態

日本の民主主義は、インターネットを介した「認知戦」という新たな脅威に直面しています。これは、私たちの思考や認識を標的とした情報工作であり、特にロシアからの影響が顕著です。SNSプラットフォーム上で偽情報やプロパガンダが巧妙に拡散され、社会の分断や不安定化を図る動きが強まっています。

日本の民主主義とロシアの情報工作

日本の民主主義は、私たちの認識を標的とした「認知戦」という情報工作の脅威に直面しています。特にロシアからの影響が顕著です。日本経済新聞の報道によれば、ロシア当局の思惑に沿うプロパガンダや偽情報を発信する日本語アカウントが国内SNSで急速に拡大。ウクライナ侵攻以降、X(旧Twitter)での拡散数は3倍以上に増加し、その影は日本にも深く及んでいることが示唆されています。
現在、7月20日投開票の参議院選挙が進行中であり、大規模な情報工作が日本のSNS空間で一層激化。社会の不安定化を目的とした偽情報や印象操作を用いたロシアなどの工作が、Twitter(X)、TikTok、YouTubeショート、Instagramといった主要SNSプラットフォームで強まっています。

SNSにおける情報操作が人々の認識に与える影響を示すイメージ写真SNSにおける情報操作が人々の認識に与える影響を示すイメージ写真

政権要人狙いの偽情報と拡散メカニズム

SNSで拡散される偽情報は、石破茂総理大臣や岩屋毅外務大臣をはじめとする政権要人を標的としています。これら偽情報や印象操作を含む投稿・動画は異常な「いいね」や初期アクセスを集め、SNSの「おすすめ」機能を通じて瞬時に拡散。大半が事実無根のフェイクニュースです。
一例として6月にはTikTokで「農林水産大臣の小泉進次郎氏にスイスで双子の隠し子がいる」という偽情報動画が410万回再生を記録しました。他にも林芳正氏のハニートラップ説、岩屋毅氏の中国スパイ説、反ワクチン言説など荒唐無稽なデマが多数存在します。
これらデマは、無名アカウントからでも特定のハッシュタグを伴い、数万単位の「高評価」「いいね」を獲得し拡散されます。背景には巧妙な「仕掛け」があり、「その話だけ切り取られたら誰もが怒る」よう設計された偽情報に触れた多くの日本人が、政府や要人に対し強い怒りや不信感を抱き、それが批判や罵声の連鎖を生み、社会を不安定化させようとする「不安定工作」の構造が見てとれるのです。

ロシア発の「認知戦」とSNS上の偽情報は、日本の民主主義に現実的な脅威をもたらしています。参議院選挙中もその活動は激化しており、情報の真偽を見極めるメディアリテラシーの向上が急務です。私たちは、複雑な情報空間において事実に基づいた情報にアクセスし、多角的な視点から物事を捉える姿勢を持つことが強く求められます。

参照元:

  • 日本経済新聞 (2024年7月2日)
  • Yahoo!ニュース(プレジデントオンライン、2025年7月16日公開記事)