女性の東京進学を阻む「見えない壁」
「東大の女子比率はわずか20.1%。ハーバード大学の約半分にとどまります。世界ではむしろ男子学生の少なさが問題視されているのに…」
現役東大生の江森百花さんと川崎莉音さんは、日本の高等教育における男女比の偏りに強い疑問を抱いています。
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2人が中心となって2023年5月に発表した調査「なぜ、地方の女子学生は東京大学を目指さないのか」は、大きな反響を呼びました。地方女子が東大を目指さない理由は、一体どこにあるのでしょうか?
地方女子の東京進学に対する不安:安全面への懸念が明らかに
調査の結果、意外な事実が浮かび上がりました。地方女子にとって、東京進学の最大の障壁は経済的な問題ではなく、安全面への不安だったのです。
「東京は危ない」「東京に行ったら殺される」…
川崎さんは、地方出身の女子学生が、幼い頃から大人たちからこのような言葉を聞かされて育ってきた現状を指摘します。
「東京は夜でも明るく、実際に住んでみると、イメージとは全く違いました。根拠のない不安が、地方女子の進路の選択肢を狭めているのは、本当にもったいないことです」
地方から女性が流出する根本的な理由とは?
「地方女子の東京進学を推進することは、首都圏一極集中を加速させることになるのでは?」
このような意見に対して、江森さんは、「問題は女性が地方から出ていくことではなく、地方に帰ってこないこと」だと反論します。
「結婚観や仕事観が柔軟で、ライフスタイルの選択肢が多い場所の方が、女性にとって生きやすい。地方が女性の多様な生き方を認めない限り、地方は女性に選ばれないでしょう」
親の期待が子供の進路に影響?
調査では、地方女子だけでなく、首都圏の女子学生にも共通する傾向が見られました。それは、女子学生の方が浪人を回避する傾向があるということです。
ベネッセと共同で行った保護者への意識調査では、「子供にいくらぐらい年収を稼いでほしいか」という質問に対して、男の子の親の方が、女の子の親よりも高い年収を期待しているという結果が出ました。
この結果から、親の期待する学歴や年収が、子供の性別によって異なり、それが子供の進路の選択肢にも影響を及ぼしている可能性が考えられます。
ジェンダーバイアスが男性の選択肢も狭めている
「男性の方が高い年収を期待される背景には、『男性は家族を支える大黒柱になるべき』というジェンダーバイアスが存在します。幼い頃から押し付けられる期待は、男性にとって大きなプレッシャーです」
江森さんは、東大に進学してくる男子学生の多くが、中高一貫の男子校出身であることを指摘し、「東大に行かなければ一人前ではない」と言われて育ってきた学生も少なくないと語ります。
まとめ:地方女子の東京進学を促進するために
今回の調査を通して、地方女子の東京進学を阻む様々な要因が明らかになりました。安全面への不安、親の期待、ジェンダーバイアス…
これらの問題を解決し、地方女子が自分の可能性を最大限に活かせる社会を実現するためには、私たち一人ひとりの意識改革が必要です。