ASEAN識者の中国傾斜鮮明化、同盟相手としては「米国より中国」が多数派に

東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の識者や政府関係者らを対象とした最新の調査で、米中間で選択を迫られた場合に「中国との同盟」を支持する声が初めて過半数を超えました。米国との同盟を支持する意見を上回る結果となり、中国の影響力拡大が改めて浮き彫りとなりました。

中国経済圏構想「一帯一路」の影響力

シンガポールのシンクタンク「ISEASユソフ・イシャク研究所」が2024年1月から2月にかけて実施した調査によると、「米国と中国のどちらかと同盟を結ぶとしたらどちらか」という質問に対し、回答者の50.5%が中国を選びました。米国を選んだのは49.5%にとどまり、2020年の調査開始以来初めて中国が米国を上回る結果となりました。

ASEAN首脳会議に出席する習近平国家主席ASEAN首脳会議に出席する習近平国家主席

中国との同盟支持が顕著だったのは、マレーシア、インドネシア、ラオス、ブルネイの4カ国で、いずれも7割を超えました。中国が主導する巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて、これらの国々では中国からの貿易や投資が拡大しており、経済的な結びつきが強まっていることが背景にあるとみられます。

南シナ海問題を抱える国々では米国支持が根強く

一方、中国と南シナ海の領有権問題を抱えるフィリピンでは、8割を超える回答者が米国との同盟を支持しました。ベトナムやシンガポールでも米国支持が過半数を占め、安全保障上の観点から米国との関係を重視する姿勢がうかがえます。

中国の影響力拡大への懸念も

調査では、中国の経済的影響力の拡大について、回答者の6割以上が「懸念する」と回答しました。「一帯一路」などを通じて経済的な結びつきが強まる一方で、中国の影響力拡大に対する警戒感も根強いことが明らかになりました。

米中対立のリスク回避、カギを握る日本への期待

今回の調査では、米中対立のリスクを回避するための「信頼できる戦略的パートナー」として、欧州連合(EU)が37.2%でトップに立ちました。次いで日本が27.7%と、高い支持を集めました。

ASEANにとって、米中対立は経済、安全保障の両面で大きなリスク要因となっています。日本は、ASEAN諸国との間で自由で開かれたインド太平洋構想を推進しており、その役割に大きな期待が寄せられています。