衆議院が解散された10月9日夜の会見で、勝敗ラインを聞かれた石破茂首相は「自公で過半数」と答えている。「政治と金」問題の逆風を受け、自民党の苦戦は容易に予想できたが、石破首相はこの時そ、「“裏金議員”を非公認、あるいは比例復活を許さないことで、有権者に対して党の姿勢を示すことができるだろう。その上で選挙後に当選者を追加公認すれば、このラインくらいは乗り越えられる」と思っていたに違いない。
■早くも「危険水域」に突入した支持率
だが実際の逆風は、その想定を超えていた。何より石破首相の「人気のなさ」が露呈したことが問題だ。
時事通信が10月17日に公表した世論調査によると、石破茂政権の支持率は28%で森喜朗政権より低かった。通常なら政権発足後3カ月ほどは「ハネムーン期間」とされて支持率は高く、メディアの批判も抑えられる。
政権成立10日後に衆議院を解散した岸田文雄前首相でさえ、政権発足直後の内閣支持率は40.3%と、4割台を維持していた。にもかかわらず、石破内閣の支持率は「危険水域」と言われる2割台に突入した。
もっとも2009年7月の時事通信の調査では、政権交代前夜の麻生太郎内閣の支持率は16.3%で石破内閣発足時よりも低い。また、自民党の政党支持率は4カ月連続低下の15.1%で、民主党(当時)の18.6%に逆転されている。
当時も国民の怒りは自民党全体に向けられていたが、今回はこれに加えて「裏金問題」の余波がある。これに伴い12人の前職が党の公認を外され、34人が比例名簿に登載されなかった。
比例単独の3人の非公認も決定し、そのうち上杉謙太郎氏は福島3区から無所属で出馬。自民党福島県連の推薦は得たものの、苦しい戦いを強いられている。
■公明党の支持があれば…
自民党の公認を得られなかったり、公認されても比例との重複立候補が認められなかったりした場合、公明党の支持がある場合はまだ望みはあるかもしれない。公明党は各小選挙区に2万票ほどを有しており、それに支えられている自民党議員は少なくない。
実際に、公明党は自民党から公認を得られなかった西村康稔氏(兵庫9区)と三ツ林裕巳氏(埼玉13区)と、比例重複なしの自民党前職34人のうち33人を推薦。公明党は兵庫2区で赤羽一嘉氏、兵庫8区で中野洋昌氏を擁立しており、自民党兵庫県連会長を務めたことのある西村氏との「票のバーター」を期待する。