中国グレーマーケットの隆盛:欧州高級ブランドに暗い影

中国経済の減速が顕著になる中、正規ルートよりも安価に高級品を購入できる「グレーマーケット」が活況を呈している。これはルイ・ヴィトンやディオールなど、中国市場を重要な収益源とする欧州高級ブランドにとって大きな痛手となっている。

景気低迷と高級ブランドの値上げがグレーマーケット人気を後押し

中国では、従来の正規販売店に加え、「得物」(Dewu) などのオンラインプラットフォームが台頭し、海外から直接調達した高級品を正規価格より20~50%も安く販売している。

コンサルタント会社リハブのマックス・ピエロCEOは、中国の消費者が価格に敏感になっていることを指摘し、価格差の存在がグレーマーケット利用の大きな要因になっていると分析する。

実際、リハブの調査によると、Dewuにおける48ブランドの売上高は、2023年第2四半期に前年同期比19%増の70億元(約1400億円)を超えたという。

中国グレーマーケットの隆盛:欧州高級ブランドに暗い影

中国経済の減速が欧州ブランドに打撃

中国国家統計局の発表によると、2023年9月の小売売上高は前年同月比わずか3.2%増にとどまり、景気の減速は明らかだ。

世界的なラグジュアリー産業において、中国は全体の約25%の売上を占める重要な市場である。中国での需要減退は、欧州の高級ブランドにとって大きな痛手となっている。

ルイ・ヴィトンなどを擁するLVMHは、2023年第3四半期の売上高が3%減少し、コロナ禍以降初の減収となったことを発表した。サルヴァトーレ・フェラガモも、中国の需要減速の影響で第3四半期売上が減少したと発表している。

高級ブランドは戦略の見直しを迫られる

グレーマーケットの拡大に加え、中古市場も活況を見せている。高級ブランド品の値上げが、消費者が中古市場に目を向ける一因になっているとの指摘もある。

中国グレーマーケットの隆盛:欧州高級ブランドに暗い影

こうした状況の中、LVMHはブランド価値を守るため、手頃な価格帯の新製品導入や中古品市場への参入は考えていないと強調している。

しかし、中国のグレーマーケットと中古市場の拡大は、欧州の高級ブランドにとって無視できない問題となっている。ブランド価値を維持しながら、変化する中国市場にどのように対応していくのか、今後の戦略が注目される。