近年、日本で「トクリュウ」と呼ばれる「匿名・流動型犯罪グループ」による凶悪犯罪が後を絶たない。2024年8月以降、首都圏を中心に相次ぐ強盗事件は記憶に新しい。従来の貴金属店や質店だけでなく、一般住宅も標的となり、被害者の死亡や連れ去りといった凶悪化も懸念されている。
SNSで繋がった若者たちによる犯行:背景に潜む社会問題
「トクリュウ」は、SNSを通じて集まった面識のない者同士で構成される犯罪グループだ。指示役は秘匿性の高い通信アプリを使い、実行役や運転役に指示を出す。その構図は、2018年から2020年にかけて世間を震撼させた「ルフィ事件」を彷彿とさせる。
強盗殺人の疑いで逮捕された宝田真月容疑者(写真・時事通信)
「ルフィ事件」では、フィリピンを拠点とした指示役が、日本の実行役たちに指示を出し、多額の金銭を奪い取った。今回の「トクリュウ」による犯行も、カンボジアやミャンマーといった東南アジア諸国からの指示が疑われている。
警察の捜査は難航:指示役特定が困難な理由とは?
警視庁は合同捜査本部を設置し、300人体制で捜査を進めているものの、これまでに逮捕されたのは実行役や運転手など末端の者ばかりで、指示役の特定には至っていない。
「ルフィ事件」では、フィリピン当局の協力もあり、指示役の特定に至った。しかし、今回の事件では、指示役が複数国に点在している可能性もあり、捜査は難航を極めている。
手口の巧妙化:従来の捜査手法が通用しない時代に
「トクリュウ」は、警察の捜査網をかいくぐるため、巧妙な手口を用いている。
- 秘匿性の高い通信アプリの利用: メッセージが自動的に消去されるため、証拠が残りにくい。
- ターゲット選定の巧妙化: 宅配便を装ったメールで個人情報を聞き出すなど、従来の「アポ電強盗」とは異なる手法も見られる。
- 少額化・短時間化: リスクを抑えるため、少額の現金を狙った犯行や、短時間で逃走する犯行が増加している。
専門家の見解:指示役は「海外逃亡した反社会勢力」か?
犯罪ジャーナリストの山田氏(仮名)は、今回の事件について次のように分析する。
「今回の事件の指示役は、“ルフィ事件”で暗躍したグループとは別の、海外に逃亡した反社会勢力である可能性が高い。彼らは、日本の警察権が及ばない地域を拠点に、巧妙な手口で犯罪を繰り返しているとみられる。」
社会全体で対策を:凶悪犯罪の撲滅に向けて
「トクリュウ」による犯罪は、私たちの安全を脅かす深刻な問題だ。警察は、国際的な捜査協力体制を強化し、一日も早い事件の解決に尽力すべきである。
同時に、私たち一人ひとりが防犯意識を高め、犯罪の被害に遭わないよう注意することが重要だ。不審な電話やメールには安易に応じない、自宅のセキュリティ対策を強化するなど、できることから対策を進めていこう。