森山氏の説明と矛盾する使途が発覚か
2021年10月の衆院選において、自由民主党の森山裕幹事長(79)が党本部から支給された1500万円の交付金の全額を、自身の選挙運動費として計上していたことが「週刊文春」の取材で明らかになりました。森山氏は選挙前に、支部長に支給される交付金について「党勢拡大のため」などと説明していましたが、今回の報道は、その説明とは異なる使途を示唆するものであり、波紋を呼ぶ可能性があります。
問題となった「党勢拡大のための交付金」とは?
事の発端は、派閥パーティーを巡る裏金事件で自民党の公認を得られなかった候補に対し、公認候補と同額の2000万円の政党交付金が振り込まれていた問題でした。森山氏は10月23日、交付を認めつつも、「党勢拡大のための活動費」だと説明しました。
では、「党勢拡大」とは具体的に何を指すのでしょうか。それを説明する文書が、翌10月24日付で、自由民主党総裁・幹事長室から党公認候補者や選挙実務者に向けて出されました。文書のタイトルは〈わが党の支部政党交付金に関する報道について〉です。
この文書では、しんぶん赤旗が「自民党が非公認の候補者に公認料を出している」かのような記事を出し、他のメディアも追随して報道していることについて、〈事実を曲解して極めて精緻に誤解を誘導するもの〉と批判しています。
交付金の使途は「支部活動の活発化や、党勢拡大のため」
その上で、交付金の使途について、以下のように説明しています。
- 自民党は通常、政党交付金を年4回、政党支部(県連、選挙区支部)に交付している。
- 選挙に際しては、支部活動の活発化や、党勢拡大のため、別途交付を行っている(今回問題となっている交付金)。
さらに、選挙における「党勢拡大」の具体例として、〈党の政策のPR、選挙区内の比例票の掘り起こし、公示前までの個人版自由民主の作成や新聞折り込みなど〉を挙げています。
政治資金問題に詳しい専門家の見解
この問題について、政治資金問題に詳しい専門家は次のように指摘しています。
「交付金はあくまで政党支部の資金なので、個人の選挙に使うものではない、というのが森山氏の説明です。しかし、議員が代表を務める政党支部の資金は、実際にはその議員の政治活動に使われることがほとんどです。『個人』宛ではないという説明は、詭弁に聞こえます。そもそも、お金に色はありません。2000万円の支給によって非公認候補の資金繰りが楽になり、結果的に選挙運動費に充てられた可能性は否定できません」
今回の森山氏のケースでは、交付金がそのまま選挙運動費として計上されていたという点で、より問題の深刻さが浮き彫りになりました。今後、森山氏には、交付金の使途について、より詳細な説明が求められることになります。