1996年に登場したホンダ・ロゴ。フィットの先代モデルにあたり、ホンダが満を持して送り出したコンパクトカーでした。「ちょうどよさ」をコンセプトに、街乗りでの使いやすさを徹底的に追求した意欲作だったのです。しかし、ロゴは期待されたほどの成功を収めることができませんでした。今回は、ロゴが市場に受け入れられなかった理由と、その後のフィットの成功への影響について探っていきます。
広々空間と低燃費を実現、ロゴの魅力とは?
ロゴは、全長3750mm~3785mm×全幅1645mm×全高1490mm~1510mmというコンパクトなボディながら、広々とした車内空間を実現していました。これは、初代フィットよりも小さいサイズです。ショートノーズ・ロングキャビンを採用し、居住空間とラゲッジスペースを最大限に確保する設計が功を奏したのです。
搭載されたエンジンは、1.3リッターSOHCエンジン。最高出力は66馬力と控えめながら、「ハーフスロットル高性能」のキャッチコピーが示す通り、低・中速域でのトルクを重視したセッティングが特徴でした。日常的な街乗りでの使いやすさを追求した結果です。これに、スムーズな変速と低燃費を実現するCVT「ホンダマルチマチック」を組み合わせ、当時としてはクラストップレベルの燃費性能を達成しました。
安全性能についても、高剛性キャビンや運転席用SRSエアバッグシステムを全車標準装備するなど、高い水準を誇っていました。
価格も77万円~121万8000円と、魅力的な設定でした。
ロゴの弱点、それは「個性のなさ」
このように、ロゴはコンパクトカーに求められる要素を高い次元で実現した「良いとこ取り」の車でした。しかし、販売面では苦戦を強いられます。その最大の要因として挙げられるのが、「個性のなさ」です。
ホンダ・ロゴ
ロゴのデザインは、シンプルさを追求した結果、没個性的なものになってしまいました。これは、デザインにこだわったことで失敗した2代目シティの反省から、あえて奇をてらわないデザインを採用したためでした。しかし、その結果「かっこよさ」も「かわいらしさ」も感じられない、当たり障りのないデザインになってしまったのです。
フィットの成功、そこにはロゴの教訓があった
ロゴの販売不振は、ホンダにとって大きな痛手となりました。しかし、ホンダはこの失敗から多くの教訓を得て、次期コンパクトカーの開発に活かします。その結果生まれたのが、初代フィットです。
フィットは、ロゴで不評だったデザインを一新し、個性的で親しみやすいスタイリングを採用しました。また、ロゴで評価の高かったパッケージングや走行性能をさらに進化させ、コンパクトカーの新たな基準を打ち立てました。
ホンダ・フィット
フィットの成功は、ロゴの失敗があったからこそ生まれたと言えるでしょう。ロゴは、まさに「縁の下の力持ち」として、ホンダのコンパクトカー開発に大きく貢献したのです。