私たちの生活に欠かせないゴミ分別。可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミなど、様々な種類に分別されていますよね。ですが、そのルールは細かく、ついつい「少しくらいなら適当でいいかな?」と思ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、ゴミの分別を怠ると、私たちの生活に大きな影響を与える可能性があります。例えば、焼却炉が水銀によって汚染され、停止してしまうケースがあるのです。今回は、意外と知らない「水銀ゴミ」の基礎知識と、正しい捨て方について解説していきます。
水銀は私たちの身近に潜む危険物質
水銀と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか? 昔懐かしい「水銀体温計」を思い浮かべる方もいるかもしれません。水銀は常温で液体状の金属ですが、気化しやすい性質を持っています。そして、気化した水銀を吸い込むと、健康被害を引き起こす可能性があります。
有名なのは、工場からの排水に含まれるメチル水銀が原因で発生した「水俣病」です。水俣病は、重質な健康被害と環境破壊をもたらした公害として、世界中に衝撃を与えました。このような悲劇を繰り返さないために、現在では水銀の処理方法は厳しく管理されています。
家庭から出る「水銀ゴミ」、その代表例とは?
家庭から出るゴミの中にも、水銀が含まれているものがいくつかあります。水銀体温計はもちろんのこと、温度計や血圧計、蛍光灯にも水銀が使われているものがあります。
さらに、ボタン電池にも微量の水銀が含まれています。水銀は、私たちの生活の身近なところに存在しているのです。これらの製品を処分する際は、各自治体のルールに従って正しく分別する必要があります。
水銀ゴミの捨て方、自治体によって異なるので要注意!
水銀ゴミの捨て方は、各自治体によって異なります。
- 中身の見える袋に入れて燃えないゴミの日に出す
- 回収ボックスに入れる
- 清掃業者へ連絡する
など、様々な方法があります。
また、製品によっては水銀を使っていないものもあるため、注意が必要です。例えば、体温計や血圧計には、水銀を使用していないデジタルタイプのものがあります。ゴミを捨てる前に、製品に水銀が使われているかどうか、必ず確認するようにしましょう。
「少しぐらい大丈夫」が焼却炉を止める!?
「微量の水銀が含まれているボタン電池程度なら、普通ゴミにちょっと混ざるくらい大丈夫なんじゃないの?」
そう思った方はいませんか?
実は、焼却炉内の水銀濃度は厳しくチェックされており、「少しぐらい」では済まされないケースもあるのです。水銀濃度が排出基準を超えると、焼却炉を停止し、設備を清掃したり汚れた部品を交換したりする必要が出てきます。
「少しならいいか」という意識が積み重なり、排出基準を超えてしまうと、私たちの生活に大きな影響が出てしまう可能性があるのです。
焼却炉の停止は莫大なコストと環境負荷に繋がる
実際に、水銀濃度の上昇によって焼却炉が停止したケースは、全国各地で報告されています。
例えば、2016年に東京都中央区の焼却炉が水銀によって汚染され、停止した事例では、復旧に約1200万円もの費用がかかりました。
また、2014年には、同じく中央区の焼却炉が約4ヶ月間停止し、復旧に約1億9600万円という莫大な費用がかかっています。
焼却炉の停止は、復旧費用だけでなく、ゴミ処理能力の低下や環境負荷の増大など、様々な問題を引き起こします。
正しいゴミ分別は、私たちの未来を守ることに繋がる
水銀を含むゴミを正しく分別することは、環境汚染を防ぎ、私たちの健康と安全を守る上で非常に重要です。
近年では、体温計や血圧計など、水銀を使用した製品は減少傾向にあります。しかし、ボタン電池のように、私たちの身の回りには、まだ水銀を含む製品が多く存在しています。
水銀ゴミを正しく分別し、焼却炉の停止を防ぐことは、私たちの未来を守ることに繋がります。ゴミを出す前に、もう一度、分別方法を確認してみてはいかがでしょうか。