取手市「中3いじめ自殺」10年目の真実に迫る なぜ調査報告書はでっちあげられたのか


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 今年1月12日、水戸地方裁判所301号法廷。三上乃理子裁判長は厳かに判決を言い渡した。自宅で知らせを待っていた原告の梶原雅子教諭(仮名)は、朗報に胸をなで下ろした。生徒の「いじめ自殺」にかかわる自身の嫌疑が晴れたのである。

「取手市いじめ自殺事件」。メディアによってこう名付けられた不幸な出来事が起きたのは2015年11月のことだった。梶原教諭が勤めていた茨城県取手市の中学校で、彼女が担任をしていた3学年のクラスに在籍していた女子生徒・川村美恵子さん(仮名)が自宅で縊死(いし)したのだ。遺書はなかった。ピアニスト志望のかわいい少女でクラスには友人がたくさんおり、自殺前にいじめの悩みを担任や友人に訴えることは全くなかった。他の教員も誰一人異変に気が付かず、両親もいじめに思い当たらなかったようだ。

批判の矛先は教諭へ

 だが批判の矛先は担任の梶原教諭に向かった。彼女の指導が、3人の女子生徒のいじめを誘発、助長したと判断され、加えて自殺当日に起きた校内の事件への梶原教諭の指導が不適切で、それが美恵子さんの自殺の引き金になったとして、これらの責任を厳しく追及されたのだ。

 もちろん教諭には、担任として教え子の自殺を未然に防げなかった自責の念は強くある。だが、自らがいじめを誘発、助長し、なおその上に自殺の引き金を引いたという調査委員会の結論は寝耳に水であり到底受け入れられるものではなかった。



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