日本の米価格が高騰し、政府の備蓄米が随意契約で店頭に並び始めた。5キロあたり2000円強という価格だが、海外に目を向けると、備蓄米ではない日本からの輸入米が普通に販売されている場所がある。さらに、日本米の品種を現地で栽培したものも流通しており、それぞれの国・地域で異なる米事情が見られる。本記事では、特徴的な4つのエリア(韓国、台湾、タイ)における日本米および日本米に近い品種の販売状況と価格、そして日本人の購入事情について詳細にレポートする。
ソウルのスーパーに並ぶ韓国米。日本米は見当当たらず、味は日本米に近いとされる
日本国内と海外の米価格事情
日本国内では米価の上昇が顕著であり、家計への影響が問題視されている。政府の備蓄米が市場に供給されるほど、状況は切迫していると言える。一方、海外の多くの地域では、日本から輸入された米や、日本品種を現地で栽培した米が手に入り、価格帯もさまざまだ。ここでは、代表的なアジアの国々での状況を見ていこう。
台湾:日本並みの高価格帯から現地産まで
台湾の台北にある大手スーパーマーケット「カルフール(家樂福)」では、「日本一番米」(岩手県産)という輸入米が5キロ換算で1090台湾元(約5243円)で販売されている。これは日本国内の平均価格(5月12~18日の全国スーパー約1000店の5キロ平均4285円)と比較しても、日本と同等かそれ以上の価格帯だ。
台湾在住の日本人主婦Hさん(40)は、台湾の米事情についてこう話す。「いつも近所のカルフールで米を買いますが、台湾産の最も安い米は6キロ389元(約1871円)、5キロ換算で1500円強くらいです。数年で30~40元値上がりしましたが、ものによっては香りが気になることも。雑穀米と混ぜれば問題ないので、うちはこれで十分。ただ、日本人が食べて『おいしい』と感じるのは、5キロ550元(約2646円)の台湾産『コシヒカリ』あたりでしょうか。台湾産も最近は種類が増えて、味も良くなっていますね」。台湾では、手頃な現地米から、日本産輸入米、そして品質の高い現地産日本品種まで、幅広い選択肢があることがわかる。
タイ:輸入米は高め、現地産日本米が人気
タイのバンコクにある日系スーパーマーケットの米売り場には、日本からの輸入銘柄米と、タイ産の日本米が豊富に並んでいる。新潟県魚沼産コシヒカリ(輸入米)は2キロで600バーツ(約2658円)と高価だが、秋田県産あきたこまち(輸入米)は2キロ355バーツ(約1573円)で、5キロ換算すると約3932円。これは日本の平均価格よりはやや安いものの、決して安価とは言えない。
タイのバンコクにあるスーパーの棚に並ぶ日本米とタイ産日本米
一方、タイで栽培された日本米の人気が高い。特に「チェンライ 減農薬日本米 秋田小町」は、タイ北部のチェンライで生産され、5キロで380バーツ(約1683円)という手頃な価格だ。
海外で米を買って帰国する日本人
日本国内での米高騰が続く中、海外で米を購入して日本に持ち帰る日本人が増えているという。食糧法や植物防疫法に基づき、検査と手続きが必要であるが、土産というよりは生活のための「買い出し」という側面が強いのだろう。どのような米が買われているのだろうか。
タイでの駐在経験があるYさん(54)は、月に一度のペースでタイへ出張し、毎回米を買って帰るという。「日本からの輸入米はタイでも割安感はありません。妻から頼まれていつも買うのは、駐在員時代に家で食べていたタイ産の日本米です」と話す。前述の「チェンライ 減農薬日本米 秋田小町」がまさにそれで、バンコク在住の日本人女性Fさん(38)も、「タイ在住の日本人で、この『秋田小町』を買っている人は多いと思います。安いですから。私も食べていますが、炊きたてなら日本からの輸入米と遜色ないですよ。ただ、時間がたつと少しパサつくという人もいます」と語る。
筆者も先日、バンコクから帰国する前にこの「秋田小町」を2キロ購入し、試してみた。炊きあがりの味は通常の日本産米と変わらないように感じられ、妻からは「これなら2キロ1000円でも買う」という感想が出た。翌日、この米で作った弁当を持っていった娘も、「普通においしかった」と昼過ぎに連絡してきた。タイ産の日本米が、価格と品質のバランスで日本人にとって魅力的な選択肢となっていることがうかがえる。
まとめ
日本の米価格高騰を受け、海外での日本米およびそれに近い品種の価格と流通状況は注目に値する。台湾では日本産輸入米は高価だが、現地産日本品種も品質を上げており、価格帯の選択肢が広い。タイでは日本からの輸入米は割高な一方、タイで栽培された日本品種、特に「秋田小町」が手頃な価格で入手でき、多くの日本人に利用されている。海外での購入は法的な手続きが必要であるものの、価格差から「買い出し」を選ぶ日本人まで現れており、日本の米価格問題の深刻さを改めて浮き彫りにしている。各国の事情を知ることは、現在の日本の食料事情を多角的に理解する上で重要な視点となるだろう。
[Source link] (https://news.yahoo.co.jp/articles/1ed068c58ca95c2a70021d47d410ea8a1d604dc0)