近年、北朝鮮のミサイル開発が加速する中、韓国も対抗措置として軍事力の強化を進めています。その中でも特に注目を集めているのが、「玄武5」と呼ばれる弾道ミサイルです。2021年の「国軍の日」に初公開されたこのミサイルは、その圧倒的な破壊力から「怪物ミサイル」の異名を持ち、中国にとっても脅威になりつつあります。一体なぜ、玄武5は中国をそこまで警戒させているのでしょうか?
中国が恐れる「8トンの破壊力」
玄武5最大の特徴は、世界最大級となる8トンもの弾頭を搭載できる点にあります。これは、地下深くにある軍事施設にも壊滅的な打撃を与えることができるほどの威力です。韓国国防省関係者によると、このミサイルは、有事の際に地下バンカーに潜む北朝鮮の指導部や核施設を破壊することを目的として開発されたといいます。
射程は中国大陸まで?
玄武5の射程は、8トンの弾頭を積んだ状態では約300キロとされています。しかし、弾頭重量を1~2トンに減らせば、射程は3000~5500キロにまで伸びると言われています。これは、中国の大部分、そして一部のロシア領土までもが射程圏内に入ることを意味します。
中国メディアも、玄武5の射程距離に注目しており、官営の澎湃新聞は「弾頭重量を1トンに減らせば射程は5000キロに達する」と報道しました。新浪ドットコムもまた、「玄武5ミサイルの長距離発射能力を軽視してはならない」と警鐘を鳴らしています。
高性能すぎる技術に不信感
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中国が懸念を抱いているのは、射程距離だけではありません。玄武5は、9軸の車両を利用した移動式発射台を採用しており、高圧ガスでミサイルを空中で点火するコールドローンチ方式も備えています。これらの技術は、本来であれば、北朝鮮のような防空能力が低い国を標的とするミサイルには必要以上の高性能です。そのため、中国国内では、「韓国は北朝鮮ではなく、中国を牽制するために玄武5を開発したのではないか」という疑念の声が上がっているのです。
「韓国版DF26」との比較
中国では、玄武5を中国軍のIRBM「東風26(DF26)」と比較する分析が多く見られます。DF26は、射程5000キロ、全長15メートル、直径1.7メートル、総発射重量20トンです。一方、玄武5は全長16メートル、直径1.6メートル、総発射重量36トンと、DF26よりも一回り大きいサイズとなっています。
更なる高性能化の可能性
軍事専門家の間では、韓国が今後、玄武5に機動再突入体(MARV)や複数個別誘導再突入体(MIRV)を搭載する可能性も指摘されています。MARVは、ミサイルが大気圏に再突入する際に変則機動を行うことで迎撃を困難にする技術です。MIRVは、複数の弾頭を搭載し、それぞれ異なる目標に誘導する技術です。もし、玄武5にこれらの技術が搭載されれば、中国にとって更に大きな脅威となることは間違いありません。
まとめ
韓国の「怪物ミサイル」玄武5は、その圧倒的な破壊力と射程距離、そして高度な技術によって、中国に大きな不安を与えています。北朝鮮への抑止力として開発されたとはいえ、その性能は中国にとって無視できないレベルに達しており、今後の韓国の軍事動向に中国はますます警戒を強めていくと予想されます。