韓国、北朝鮮の長射程砲に対抗する「韓国型アイアンドーム」配備を2年前倒しへ

韓国軍は、首都圏を標的とする北朝鮮の長射程砲の脅威に対抗するため、「韓国型アイアンドーム」とも呼ばれる長射程砲迎撃システム(LAMBDA)の配備時期を2年前倒しすることを決定しました。

北朝鮮がウクライナに兵器を供与し、ロシアから先進的なミサイル技術を得る可能性が高まっていること、さらに最近、北朝鮮が新型戦術弾道ミサイル移動式発射台(TEL)250台を最前線に配備したことが、今回の決定の背景にあるとみられます。

朝鮮半島の緊張高まる中、防衛力強化を急ぐ韓国

2023年10月28日、韓国防衛事業庁はソウル龍山区の国防部庁舎で第164回防衛事業推進委員会会議を開催し、「長射程砲迎撃体系事業推進基本戦略修正案および体系開発基本計画案」を審議・議決しました。

これにより、当初2031~2035年を予定していたLAMBDAの戦力化時期を2年ずつ前倒しし、2029~2033年に短縮することが決定しました。

韓国国防部が公開した長距離砲迎撃システム(LAMBDA)迎撃体の試験発射の様子韓国国防部が公開した長距離砲迎撃システム(LAMBDA)迎撃体の試験発射の様子

LAMBDAは、「ソウルの火の海」と脅迫してきた北朝鮮軍の長射程砲から主要施設を守るための対空防衛システムです。 北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対抗するための兵器体系である韓国型3軸体系「キルチェーン(Kill-Chain)-韓国型ミサイル防御(KAMD)-大量反撃報復概念(KMPR)」のうち、KAMDに属します。

北朝鮮のミサイル戦力増強に対抗

今回の早期戦力化は、北朝鮮が弾道ミサイルの「物量攻勢」を仕掛けてくる事態を想定したものです。 北朝鮮は近年、首都圏だけでなく韓国全域を射程に収める短距離弾道ミサイルや巡航ミサイルなど、多様なミサイル開発に注力してきました。

このような状況下、北朝鮮が韓国に対して「混ぜて攻撃」を仕掛けてくる可能性が懸念されています。

さらに、北朝鮮は10月13日、国境線付近の8つの砲兵旅団に「完全射撃準備態勢」を命令したと発表しており、緊張が高まっています。 これらの砲兵旅団には長射程砲部隊も含まれているとみられています。

防衛事業推進委員会の議決により、LAMBDA事業期間は2022年から2033年となり、総事業費として約2兆9494億ウォン(約3268億円)が投入される予定です。

KAMDの強化やK2戦車の国産化も推進

今回の会議では、LAMBDAの早期配備に加えて、KAMDの中核であるパトリオット(PAC3)迎撃ミサイルの追加調達と発射台の改良事業を従来計画よりも拡大することも決定されました。

これは、ロシアとの軍事協力によって北朝鮮のミサイル技術がさらに高度化する可能性を考慮した措置です。 この事業には、2027年までに7500億ウォンが投入される予定です。

さらに、K2戦車の第4次量産に国産変速機を採用することも決定されました。 これまで製造されたK2戦車には、韓国製エンジンとともにドイツ製変速機が搭載されていましたが、2028年までに生産され韓国軍に供給される150両のK2戦車には、韓国の防衛産業会社SNTダイナミクスが開発した国産変速機が搭載される予定です。

防衛事業庁関係者は、「将来的には、K2戦車の輸出モデルにも韓国製変速機が搭載される可能性があり、輸出の活性化にも繋がる」と期待を寄せています。