世界経済の不透明感にもかかわらず、世界の株価は年初から大きく上昇。特に日本株は急ピッチで上昇し、「景気減速下での株高」に多くの投資家が疑問を抱いています。本稿では、この背景にある金融情勢と投資動向を考察します。
「景気減速下の株高」を促す資金シフト
世界経済の先行不透明感にも関わらず株価は上昇基調にあり、特に日本株は海外投資家から「出遅れ」感から買いを集め急騰しました。この背景には、インフレによる実質資産価値の低下、世界的な資金余剰、そして主要国の財政悪化懸念による国債価格の下落リスクがあります。大手投資家は消去法的に株式保有割合を増やす選択を迫られているのです。しかし、その急激な上昇ペースは、どこかで世界的な調整局面を招く可能性も指摘され、注意が必要です。
2025年8月18日、東京都中央区で日経平均株価の終値を示すボード。日本株高の背景にある金融情勢を示唆。
財政拡大路線と地政学リスクがもたらす市場への影響
4月上旬のトランプ大統領による相互関税発表後、株価は一時調整しましたが、大手投資家はこれを好機と捉え、株式購入に動きました。金利上昇の主な要因は、各国での財政出動懸念です。米国は大型減税・歳出策、欧州主要国は景気刺激と国防力増強のため財政支出を拡大。日本でも参議院選挙での与党敗北懸念から「ばらまき型」政策による財政悪化が懸念され、これまで国債を積極的に購入してきた機関投資家は、国債の買い増しが困難に。この状況が国債価格を下押しし、投資資金の株式シフトを加速させています。
物価高と金融政策の動向が促す株式投資
物価上昇懸念は国債保有にとってマイナス要因です。米国の関税や紅海情勢の悪化は、サプライチェーンの混乱を通じて世界的な物価上昇圧力を高めています。一方で、中国は景気下支えのため金融緩和を継続。日本は物価上昇への利上げが必要な状況ながら、個人消費や中小企業への打撃を考慮すると実行は困難です。8月上旬以降、米国では雇用統計悪化とトランプ大統領の利下げ重視姿勢により、利下げ期待が高まっています。このように、豊富な投資資金と、財政悪化・物価上昇懸念が併存する中、主要投資家は消去法的に株式へと資金をシフト。特にAI関連分野の成長銘柄が多い米ナスダックや、中長期的な観点から韓国・ドイツ株への投資も増加傾向です。
世界の株高は、インフレ圧力、潤沢な投資資金、主要国の財政悪化による国債魅力低下が複合的に作用し、投資マネーが株式へ流れる「消去法的」状況を生んでいます。日本株も急速な上昇を見せていますが、その急激なペースは今後の調整局面を示唆する可能性も。投資家は市場の変動に注意深く対応すべきです。