投票日が目前に迫った米大統領選で、民主党候補のカマラ・ハリスが苦戦を強いられている。7つの激戦州のなかでも、とりわけ中西部ミシガン州での勝敗が命運を分ける可能性が出てきた。国際政治学者の三牧聖子氏が解説する。
注目すべきはペンシルベニア州だけでなく…
米大統領戦が1週間後に迫るなか、民主党候補のカマラ・ハリス副大統領の勢いに陰りが見えてきた。
大統領選は全米での得票数を競い合うのではなく、全米50州と首都ワシントンに人口等に応じて割り当てられた合計538人の選挙人の獲得数を競い合う。ほとんどの州が、民主党候補が勝利する「青い州」と、共和党候補が常に勝利する「赤い州」に色分けされるが、両党の支持率が拮抗し、大統領選ごとに結果が変わる激戦州が7州ほどあり、これらの州での勝敗が最終的な勝利の行方を左右する。
11月5日の投票日を目前に控えたいま、7つの激戦州の支持率でハリスは共和党候補のドナルド・トランプ前大統領に対して保ってきたリードを失った。
とりわけハリスが死守しようとしている激戦州は、かつては民主党の牙城であったことから「青い壁」と呼ばれるペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3州だ。2016年大統領選ではトランプがこの3州を制して勝利し、2020年はジョー・バイデン大統領がすべて取り返して勝利した。
3州のなかで選挙人の数が最も多い(19人)ペンシルベニア州に関心が集まりがちだが、動向が注目されるのが、アラブ系市民を多く抱え、選挙人15人が割り振られているミシガン州だ。
アラブ系米国人研究所によると、ミシガン州にはアラブ系が40万人近くいる。彼らの多くは2020年大統領選ではバイデンに投票し、その勝利に大きく貢献したが、ハリスはいま、彼らの票を失いつつある。
10月にアラブ系を対象におこなわれた複数の世論調査では、トランプがハリスを僅差で上回るという結果が出た。ハリス陣営にとっては衝撃的な事態だ。
トランプ政権時代を思い出せば、就任後早々に、イスラム教徒が多数を占める7ヵ国からの入国を制限・禁止する大統領令を発し、イスラエルの米国大使館をエルサレムに移転するなど、多くの親イスラエル・反イスラム教徒の政策がとられた。
ハリス陣営が「アラブ系がトランプを支持するはずがない」と考えていたとしても無理はない。