中央アジアは、かつてソ連の影響下にあった歴史から、長らくロシアの勢力圏とされてきました。しかし近年、この地域で存在感を増しているのは中国です。米中露による新たな「グレートゲーム」の舞台となっている中央アジア。今回は、その最前線である中国・カザフスタン国境の街ホルゴスを取材し、現地の状況をレポートします。
中国とカザフスタンの架け橋:「ホルゴス自由貿易特区」の活況
中国の首都・北京から飛行機で西へ約4時間半。新疆ウイグル自治区とカザフスタンの国境に位置するホルゴスには、「ホルゴス自由貿易特区」が広がっています。2012年に設立されたこの特区は、習近平国家主席の主導のもと開発が進められ、両国の経済関係強化の象徴となっています。
中国とカザフスタンの国境にあるホルゴス自由貿易特区の賑わい
東京ドーム約100個分の広さを誇るこの特区では、中国人、カザフスタン人双方ビザなしで行き来が可能。ホテルやレストラン、商店などが立ち並び、活気に満ち溢れています。2024年には既に500万人が訪れる人気スポットとなっており、両国の経済交流を促進する重要な拠点としての役割を担っています。
ビザなし渡航で活発化する交易:人々の往来と経済効果
特区内では、パスポートのチェックは行われますが、スタンプは押されません。手続きは簡素化され、人々の往来をスムーズにしています。ただし、特区を通過してカザフスタンに入国することはできません。
免税で商品が購入できるため、多くの観光客や貿易商が集まります。カザフスタン人に人気なのは中国製の衣料品や化粧品などの日用品。一方、中国人はカザフスタン産のはちみつ、チョコレート、タバコなどを買い求めます。中国元とカザフスタン・テンゲの両通貨が使用できるため、買い物もスムーズです。
文化交流の拠点:多様な食文化と異国情緒
特区内には中華料理店やカザフ料理店が軒を連ね、多様な食文化を楽しむことができます。まるで外国旅行に来たかのような異国情緒を味わうことができ、見て回るだけでも楽しいひとときを過ごせます。国際色豊かな雰囲気の中で、両国民の文化交流も活発に行われています。
中央アジアの未来:中国の影響力拡大と国際関係の行方
カザフスタン専門家である山田一郎氏(仮名)は、「ホルゴス自由貿易特区は、中国の『一帯一路』構想における重要な拠点であり、中央アジアへの影響力を拡大する戦略の一環と言えるでしょう。今後、この地域における中国の存在感は更に増していくと予想されます」と指摘します。
中央アジアの地政学的リスクの高まり、そして米中露のせめぎ合いの中で、この地域の未来はどのようになっていくのでしょうか。ホルゴス自由貿易特区の活況は、中央アジアのダイナミズムと同時に、複雑な国際関係を映し出していると言えるでしょう。